はじめに:遺言を書けば安心、とは限らない?
「遺言書を書いたからもう安心」と思っていませんか?
実は、形式や内容に不備があると、遺言書が「無効」になってしまうこともあるのです。
また、法的には有効でも、遺された家族の間にトラブルを引き起こす例も多数。
この記事では、よくある失敗例をもとに「有効な遺言とはどのようなものか」を、5つのポイントでわかりやすく解説します。
よくある遺言トラブル事例
① 自筆遺言が無効だった(形式不備)
【事例】
お父さんが自筆で書き残していた遺言書。
しかし、日付が「令和◯年◯月」のみで、署名がフルネームでないという理由で無効に。
📌 自筆証書遺言は厳格な形式が法律で定められているため、少しの書き間違いでも無効になるリスクがあります。
② 相続人の一人が納得せず、裁判沙汰に
【事例】
長男に不動産、次男には現金という内容の遺言。
「不動産の価値が高すぎる」と不満を持った次男が遺留分侵害を主張し、家庭裁判所で争いに。
📌 法定相続人には、最低限保障される「遺留分」があります。
これを侵害すると、後から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。
③ 書いた内容が古くなって現状に合わない
【事例】
遺言作成後に不動産を売却していたが、遺言では「◯◯の土地を○○に相続」と記載されたまま。
→ 実際にはその財産は存在せず、意図が不明に。
📌 遺言は「書いたときの状況」が反映されているため、年月が経つと現状とズレてしまうことがあります。
④ 書いた人の意思能力が疑われて無効に
【事例】
高齢者施設に入居中の方が書いた遺言に対して、
「認知症の影響で判断能力がなかった」と相続人から異議が出され、無効の判決。
📌 遺言は本人に判断能力(意思能力)があるときでなければ有効になりません。
⑤ 保管が不十分で遺言書が見つからなかった
【事例】
書いたことは家族に話していたが、保管場所が不明で見つからず、遺産分割協議が通常通り進行。
📌 「存在しても、見つからなければ意味がない」。
特に自筆証書遺言は、保管の方法に注意が必要です。
有効で“もめない”遺言にするための5つのポイント
① 公正証書遺言を活用する
✅ 最も確実な遺言方法です。
公証人が内容と本人確認を行い、法的ミスが防げます。
→ 自筆より費用はかかりますが、「無効になるリスク」は圧倒的に低いです。
② 財産の価値と遺留分に配慮する
遺留分(配偶者・子・親に与える最低限の相続分)を侵害するとトラブルに。
✅ 不動産だけに偏らず、現金や金融資産をバランスよく分ける
✅ 説明が必要なときは「なぜこの配分なのか」をエンディングノート等で補足
③ 定期的に内容を見直す
相続対象の財産や家族関係は変化します。
✅ 不動産の売却・贈与
✅ 相続人の結婚・死亡・疎遠化
✅ 気持ちの変化
📌 2~3年に一度はチェックを習慣にしましょう。
④ 遺言執行者を明記しておく
「この人が遺言どおりに執行してくれる」という信頼できる第三者(親族や専門家)を指名することで、遺言の実行がスムーズになります。
⑤ 家族に遺言の存在と意図を伝えておく
いきなり遺言の存在を知らされた家族は、驚きや誤解から感情的になることもあります。
✅ 書いた理由・想いを丁寧に説明
✅ エンディングノートや手紙などで「気持ちの橋渡し」をする
まとめ:「書く」だけでなく「伝える」が大切
遺言は、書けば終わりではありません。
正しく書き、適切に保管し、必要な人に伝えることまでが大切です。
特に「家族がもめないように」と思って書いた遺言が、
逆に争いの火種になってしまっては本末転倒。
✅ 公正証書で確実に
✅ 内容のバランスと想いの伝達も忘れずに
家族を想う気持ちを、“かたち”に残す準備を今日から始めましょう。