はじめに:「遺言は高齢者だけのもの」と思っていませんか?
「遺言」という言葉から、“人生の最終段階に書くもの”というイメージを持つ方は多いかもしれません。
しかし実際は、30代や40代・50代といった現役世代でも、遺言を書いておくことで守れるものがあります。
特に重要なのが、以下のようなライフイベントのタイミング。
- 結婚・離婚・再婚
- 出産・認知・養子縁組
- マイホーム購入
- 事業承継や副業開始
- パートナーとの事実婚
こうした人生の節目では、家族の形や財産のあり方が変わるため、遺言で自分の意思を明確にしておくことがとても有効なのです。
結婚・再婚したら「配偶者を守る遺言」を
結婚しても、遺言がなければ相続は法定割合に基づいて決まります。
しかし、実際にはそれで「守れない人」もいます。
例えばこんなケース:
- 再婚して連れ子がいる場合
→ 配偶者が死亡しても、連れ子には相続権がない
→ 養子縁組をしなければ法定相続人にならず、遺言が必要 - 内縁関係で籍を入れていない場合
→ どれだけ長く暮らしていても、遺言がなければ配偶者扱いされない
→ 住む家を失うリスクも
遺言があれば、「この家を妻に残したい」「この預金はパートナーに」という意思を法的に有効に伝えることができます。
出産・子の認知をしたら「子どもへの想いを形に」
未婚のまま子を認知した場合、相続権は発生しますが、認知の有無やタイミングで影響が出ることがあります。
また、遺言で「この子に将来●●を継がせたい」「大学資金を残したい」など、想いのある配分を明確にすることも可能です。
さらに、「遺言執行者」を指名しておけば、未成年の子のためにきちんと遺志が実現されやすくなります。
離婚・再婚したときこそ「財産と感情の整理」が必要
現代は、離婚・再婚も珍しくありません。
ただし、戸籍と相続権は深くつながっており、意図しない人が相続人になることも。
例えば:
- 「もう縁が切れた元配偶者」
- 「疎遠な前妻との子」
- 「現在の家族と関係の薄い法定相続人」
こうした人に財産が渡ってしまうリスクを避けるには、「誰に何を遺すのか」を明確にした遺言が不可欠です。
住宅購入・保険・資産形成後は「財産の見える化」を
30代〜50代では、住宅ローンや保険、投資などで資産が複雑になってくる世代です。
本人は「自分が死んだらこの保険で安心」と思っていても、家族が全てを把握しているとは限りません。
遺言に「どこに、どんな財産があるか」を簡単にまとめておくだけでも、万一のときに家族が困らずにすみます。
特に、ネット証券や仮想通貨などは存在自体がわからず“消えてしまう”ことも。
→ 資産リストを付けた遺言やエンディングノートで備えておきましょう。
事業や副業をしている人も「事業承継対策」として有効
近年は副業やフリーランスが増え、法人を持っていたり、個人で収益を得ている世代も多数います。
- 「家族に何をどう引き継いで欲しいか」
- 「誰に引き継いで欲しくないか」
- 「顧客・パートナーへの連絡はどうするか」
これらを遺言で指定しておくことで、事業の継続性や信用の維持にもつながります。
ライフイベントごとに「遺言の更新」を
遺言は一度書いたら終わり、ではありません。
人生は変化の連続です。
だからこそ、遺言も定期的な見直し・更新が重要になります。
おすすめは、以下のようなタイミング:
ライフイベント | 更新の目安 |
---|---|
結婚・離婚 | 家族構成が変わるたびに |
出産・認知 | 子どもが増えた・認知したとき |
不動産購入 | 財産の割合が変わったとき |
相続税対策の開始 | 節税や遺留分に配慮した設計時 |
家族関係の変化 | 相続させたい人が変わったとき |
おわりに:「遺言は40歳の保険」と考えてみませんか?
保険に入るように、火災報知器を設置するように、
遺言は“人生に備えるインフラ”として、もっと当たり前にしていきたい。
「遺言=終活」ではありません。
むしろ、遺言=家族の安心をつくるライフツールです。