認知症による「口座凍結」を防げ!遺言書とセットで備える「任意後見制度」の活用術

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遺言書だけでは守れない「空白の期間」をご存知ですか?

「遺言書を書いたから、これで老後は安心だ」 そう胸をなでおろしている方に、ぜひ知っておいていただきたい重要な事実があります。

遺言書が効力を発揮するのは、あくまで「亡くなった後」です。

しかし、人生の幕を下ろす前に、もし認知症などで判断能力が衰えてしまったらどうなるでしょうか。

  • 銀行口座が凍結され、自分の介護費用すら引き出せなくなる
  • 自宅を売却して施設入居資金に充てたくても、本人の意思確認ができず売買契約が結べない
  • 悪質な訪問販売や詐欺に遭っても、契約を取り消すことができない

遺言書を作成してから亡くなるまでの間に訪れるかもしれない、この判断能力が低下した「空白の期間」

ここを守るための唯一の法的手段が、今回解説する「任意後見制度(にんいこうけんせいど)」です。

今回は、行政書士の視点から、認知症による資産凍結リスクの回避策、そして遺言・死後事務委任と並ぶ終活の三本柱である任意後見制度について解説します。

2025年、日本は国民の4人に1人が75歳以上となる超高齢社会のピークを迎えます。

これに伴い、認知症患者数も急増し、誰にとっても他人事ではなくなっています。

「銀行口座の凍結」という恐ろしい現実

銀行は、預金者の判断能力が不十分であると知った場合、資産を守るという名目で口座を凍結します。

たとえ家族であっても、本人の通帳と印鑑を持って窓口に行くだけでは、まとまった金額の払い戻しは受けられません。

「父の介護費用が必要なのに、父の貯金が使えない」という悲劇は、今この瞬間も全国で起きています。

成年後見制度(法定後見)の限界

判断能力が低下した後に申し立てる「法定後見」という制度もありますが、これには大きなデメリットがあります。

  • 後見人を自分で選べない
    弁護士や司法書士など、全く知らない専門家が裁判所から選任されるケースが非常に多い。
  • 柔軟な資産運用ができない
    裁判所の監督下に入るため、家族のための支出や相続税対策としての生前贈与などは一切認められなくなります。
  • 一生続くコスト
    一度始まると、亡くなるまで専門家への報酬(月額数万円〜)が発生し続けます。

これらの制約を回避し、自分の信頼する人に、自分の望む形で財産を管理してもらうための仕組みが「任意後見」なのです。

任意後見制度とは、まだ元気で判断能力がしっかりしているうちに、将来判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ「誰に(後見人)」「どのようなサポート(権限)」をしてもらうかを契約で決めておく制度です。

「信頼できる人」を自分で指名できる

任意後見の最大のメリットは、将来自分の生活や財産を支えてくれる人を、自分で選べる点にあります。

子供、兄弟、あるいは長年信頼している友人や、当事務所のような行政書士を指名することも可能です。

支援してほしい内容を
「オーダーメイド」で決められる

「預貯金の管理だけでなく、老人ホームの入所手続きも頼みたい」「自宅を売却する時期はこうしてほしい」といった具体的な希望を契約書に盛り込むことができます。

あなたの価値観やライフスタイルを尊重した支援が受けられるのです。

裁判所の「後見監督人」による
安心のチェック体制

任意後見が始まると、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任します。

この監督人が、後見人が正しく仕事をしているか、財産を着服していないかを厳しくチェックします。

身内に任せる場合でも、この第三者の目があることで、他の親族からの疑念を晴らし、透明性の高い管理が可能になります。

任意後見契約は、それ単体でも有効ですが、他の契約と組み合わせることで「一生涯の安心」へと昇華します。

≪ステップ1≫
見守り契約・財産管理等委任契約

「認知症ではないけれど、足腰が弱って銀行に行くのが大変になった」という段階からスタートする契約です。

この段階では、任意後見はまだ発動しませんが、事務的なサポートを受けることができます。

≪ステップ2≫
任意後見契約

判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に申し立てを行い、後見としての公的な権限がスタートします。

これにより、本格的な財産管理と施設入所などの契約行為(身上保護)が可能になります。

≪ステップ3≫
遺言書 + 死後事務委任契約

亡くなった後の財産の分け方(遺言)と、葬儀や遺品整理(死後事務)を確実に行います。

この一連の流れを同じ専門家に託しておくことで、「お元気な時から、認知症の期間、そして最期の後始末まで」、途切れることのないサポート体制が構築できます。

任意後見契約は、非常に重要な契約であるため、法律によって「公正証書(こうせいしょうしょ)」で作成することが義務付けられています。

手続きの流れ

  1. コンサルティング
    どのような生活を送りたいか、誰を後見人にするかを行政書士と相談します。
  2. 文案作成
    希望をすべて盛り込んだ契約書のドラフトを作成します。
  3. 公証役場での嘱託
    本人と後見人候補者が公証役場へ行き、公証人の前で署名・捺印します。
  4. 登記
    公証人が法務局へ任意後見契約の登記を依頼します。
    (これにより、対外的に後見人候補であることが証明されます)

契約が「発動」するタイミング

契約を結んだだけでは、まだ後見人の権限は発生しません。

本人の判断能力が不十分になった際、親族や後見人候補者が家庭裁判所に「任意後見監督人の選任」を申し立て、監督人が選ばれた瞬間に、任意後見が正式にスタートします。

現代の任意後見において、避けて通れないのがデジタル資産の管理です。

ネット銀行・証券・サブスクリプション

本人が認知症になると、スマートフォンのパスワードが分からなくなり、ネット銀行の操作ができなくなります。

また、月額課金(サブスク)の解約ができず、延々と料金が引き落とされる事態も発生しています。

最新の任意後見実務では、これらのID・パスワードの保管と、いざという時の管理権限を契約書に明記しておくことが、極めて重要になっています。

任意後見は、家族間で完結させることも可能ですが、なぜ専門家の介入が必要なのでしょうか。

家族間の争い(争族)を未然に防ぐ

「なぜ長男だけが後見人になるのか」「親の金を勝手に使っているのではないか」という疑念は、一度生まれると修復困難です。

行政書士が契約の公正な立会人となり、定期的な報告体制を整えることで、親族間の信頼関係を守ります。

複雑な法務・事務手続きの代行

家庭裁判所への申し立て書類の作成や、公証役場との事前打ち合わせなど、専門的な知識が必要な場面はすべてお任せいただけます。

費用の目安

任意後見契約の作成費用は、一般的に10万円〜15万円程度(公正証書作成費用、登記費用などの実費別)です。

後見が発動した後の報酬については、月額3万円〜5万円程度が相場ですが、契約内容によって柔軟に設定可能です。

すでに認知症が始まっていますが、今からでも任意後見契約は結べますか?

任意後見契約は「契約」ですので、ご本人に契約の内容を理解できる判断能力(意思能力)が残っている必要があります。
医師の診断によりますが、初期段階であれば可能なケースもあります。
お早めにご相談ください。

後見人を頼める親族がいないのですが、どうすればいいですか?

行政書士法人が後見人を引き受けることも可能です。
これを「法人後見」と呼び、担当者が変わっても組織として永続的にサポートできるため、非常に安心感が高いと好評です。

任意後見契約は後から解約できますか?

判断能力があるうちであれば、公証人の認証を受けた書面によって解約することが可能です。
ただし、任意後見がすでにスタート(発動)している場合は、家庭裁判所の許可が必要となり、正当な理由が求められます。

任意後見制度は、あなたが「自分らしく生きる」ことを最後まで諦めないための、究極のセルフプロデュースです。

  • 認知症になると銀行口座が凍結され、自分や家族の生活に支障が出るリスクがある。
  • 遺言書は死後の備えであり、生前の認知症期間をカバーするには任意後見契約が必要。
  • 任意後見は、自分の信頼する人をあらかじめ自分で選べるため、法定後見よりも自由度が高い。
  • 公正証書で作成し、将来の財産管理・身上保護の内容を詳細にオーダーメイドできる。
  • デジタル資産の管理など、最新の生活様式に合わせた契約条項の盛り込みが必須。
  • 行政書士をパートナーに選ぶことで、法的に不備のない契約と、親族間の円満な調整が可能になる。

認知症への備えは、早すぎるということはありません。

判断能力がしっかりしている「今」だからこそ、将来の自分と家族のためにできることがあります。

「どのタイミングで始めればいいのか?」「信頼できる後見人は誰か?」といった不安を、一つひとつ解消していくことが、心のゆとりを生み出します。

あなたのこれまでの歩みを尊重し、これからの人生を法的に守り抜くために、私たちは全力を尽くします。

あなたの未来が、たとえどんな状況になっても、あなた自身の意志で輝き続けることを願っております。

本原稿は2025年現在の最新法令および実務慣行に基づき作成されていますが、実際の契約にあたっては必ず個別具体的な状況を専門家にご相談ください。

ご相談は初回無料!お気軽にお問い合わせください。

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