はじめに:「遺言を書く=重たい作業」だと思っていませんか?
「遺言」と聞くと、
「気が重い」
「なんだか縁起でもない」
「書いたら死を意識してしまいそう」
そんなイメージを抱いてしまう方が多いのではないでしょうか。
しかし、実際に遺言を書いた方からは、こんな声がよく聞かれます。
「書いたら気持ちがスッと楽になった」
「モヤモヤしていた不安が整理された」
「これで、もしもの時も家族に迷惑をかけないという安心感がある」
なぜ、遺言を書くことが「心の整理」になるのでしょうか?
今回はその理由を、3つの視点から解説していきます。
理由①:自分の大切なもの・人・想いを“棚卸し”できる
遺言を書くプロセスには、
- 自分の財産を見直す
- 大切な人を改めて意識する
- 「何を、誰に、どう残すか」を考える
というステップが含まれます。
この作業は、まさに人生の棚卸しとも言えます。
たとえば、
「いつも気にかけてくれた弟には何か残したい」
「両親が高齢だから、少しでも楽にしてあげたい」
「お世話になった恩師に、形として感謝を伝えたい」
…そんな風に、人とのつながりや感謝の気持ちを再確認する時間になります。
単なる財産分配の話ではなく、「これまでの自分の人生を見つめ直す」大切な時間になるのです。
理由②:漠然とした不安が「明文化」でスッキリする
多くの人が心のどこかに抱えている、「もしものとき、どうなるんだろう?」という不安。
- 家族がもめないか
- 子どもに迷惑をかけないか
- 財産はちゃんと処理されるか
- 伝えたかったことが伝えられずに終わらないか
これらは、漠然と考えているだけでは不安が消えません。
しかし、遺言として文章にして明文化することで、自分の気持ちに整理がつき、安心感が生まれるのです。
書くことで、不安が「言語化」され、現実的な対応策へと変わる。
書くことで、自分の「判断」が明確になる。
この変化は、思った以上に大きな心理的効果があります。
理由③:残された人への「最後のメッセージ」になる
遺言は、単なる財産分与の指示書ではありません。
本来、遺言は「手紙」であり、「メッセージ」であり、「想いの伝達手段」です。
たとえば遺言の中に、
- 「お母さん、これまで育ててくれてありがとう」
- 「妻へ。感謝の気持ちは言葉では足りません」
- 「子どもたちへ。これからも仲良く支え合っていってほしい」
そんな一文を添えるだけで、遺言は単なる手続き文書ではなく、深い感情のこもった“人生の証”になります。
そしてそれは、書いた本人にとっても、「生きてきた証をちゃんと残せた」という実感となって心を軽くしてくれるのです。
補足:専門家と一緒に書くと、さらに整理されやすい
自筆で遺言を書くことももちろん可能ですが、
「どう書けばいいか分からない」
「法的に間違ったら無効になるのでは」
と不安な場合は、専門家に相談することでスムーズに進みます。
行政書士・司法書士・弁護士などに相談しながら書くことで、自分の考えが言葉としてまとまりやすくなる効果もあります。
おわりに:「遺言を書く」は、自分を肯定する作業
これまでの人生、これからの人生。
その中で「自分は何を残したいのか?」を考えることは、自分自身の存在と向き合うことでもあります。
遺言を書くことは、未来に対して“備える”だけでなく、今の自分を「よくやってきた」と認めてあげる行為でもあるのです。