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「遺留分」とは?相続でもめないために知っておくべき最低限の権利
「遺言書に“全財産を長男に相続させる”と書かれていたけれど…、それって法的に認められるの?」
相続の現場では、こうした疑問がしばしば生じます。
実は、たとえ遺言であっても一定の相続人に対しては、最低限保障された“取り分”があるのです。
それが今回のテーマである「遺留分(いりゅうぶん)」です。
今回は、相続トラブルを未然に防ぐためにも知っておきたい「遺留分」について、わかりやすく解説します。
✅ 遺留分とは?
遺留分とは、法律で保障された最低限の相続分のことです。
遺言などによって、特定の人に多くの財産を相続させたり、ある人をまったく相続人にしなかったとしても、法律上、最低限の割合は受け取る権利があるという制度です。
この制度は、相続人の生活を守り、過度な不公平を防ぐために設けられています。
👥 遺留分を主張できる人(遺留分権利者)
遺留分が認められるのは、以下の法定相続人のうち、特定の範囲に限られます。
相続人の種類 | 遺留分あり | 遺留分なし |
---|---|---|
配偶者 | ✅ あり | ― |
子ども | ✅ あり | ― |
直系尊属(父母など) | ✅ あり(※子がいない場合) | ― |
兄弟姉妹 | ❌ なし | → 請求できません |
✅ ポイント:兄弟姉妹には遺留分がありません!
遺言で「全財産を他人に相続させる」と書いてあっても、兄弟姉妹には異議を唱える法的権利はありません。
📊 遺留分の割合(遺留分の計算方法)
遺留分の割合は、「法定相続分」に対して、次の割合で計算されます。
相続人の構成 | 遺留分の割合(全体に対して) |
---|---|
子・配偶者がいる場合 | 法定相続分の 1/2 |
配偶者のみ、子なし(直系尊属が相続人) | 法定相続分の 1/3 |
🔸 たとえば…
子どもが1人だけいる場合、通常の法定相続分は100%ですが、遺留分としてはその「1/2」=「50%」を主張できます。
📝 遺留分を侵害されたらどうする?〜遺留分侵害額請求〜
仮に遺言書などによって遺留分を下回る相続になってしまった場合、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」を行うことができます。
📌 ポイント:
- 2019年7月の法改正により、「物そのもの」ではなく「金銭での請求」に一本化されました。
- 財産を返せとは言えず、「相当額の金銭を請求する」という形になります。
📅 遺留分請求の期限に注意!
遺留分侵害額請求には時効があります。
- 相続が開始したこと、および侵害を知った日から1年以内
- または、相続開始から10年以内
📌 この期間を過ぎると、遺留分を請求する権利は消滅してしまいます。
⚠️ 遺留分をめぐるトラブルの例
- 長男に全財産を相続させるという遺言があったが、次男が遺留分の請求をして揉めた
- 内縁の妻に大半の財産を残そうとしたが、子どもたちが遺留分を主張
- 事業承継のため、会社を継がせたい子にすべて渡したいが、他の子が遺留分を請求
こうしたトラブルを防ぐためには、遺言書に配慮のある文言(付言事項)を入れる、あるいは専門家に相談することが重要です。
💡 遺留分対策としてできること
遺言を書く側も、遺留分に配慮しておくことで相続トラブルを未然に防ぐことができます。
▶ 遺留分を考慮した分配にする
→ 法定相続人の取り分をゼロにしない形で財産を分ける
▶ 遺留分を請求されにくい遺言の書き方をする
→ 感謝の気持ちや事情を丁寧に説明する「付言事項」を添える
▶ 生前に遺留分に配慮した贈与や契約を検討する
→ 家族信託、生前贈与、相続時精算課税制度などを活用
✅ まとめ:遺留分は“もらえる権利”であり、“守るべき制度”でもある
遺留分は、相続人に最低限の財産を保障するための大切な制度です。
一方で、遺言を書く側としては、この制度を知らずに遺言を残すと、相続争いの原因になることもあります。
相続を“争族”にしないためにも、遺留分の知識と、それを踏まえた遺言作成がとても重要です。