遺言書を無効にさせない「遺留分」の基礎知識と3つの回避策!「全財産を長男に」は通用しない!?

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目次

遺言書を書く前に、これだけは知っておいてほしいこと

「自分には、長年連れ添った妻にすべての財産を残したい」

「家業を継いでくれる長男に、自宅と株を全部譲りたい」

「音信不通の次男には、1円も渡したくない」

遺言書を書こうとする動機は、人それぞれです。

自分の財産ですから、自分の好きなように処分したいと思うのは当然のことでしょう。

しかし、日本の法律(民法)には、遺言者の「自由」を制限し、残された家族の生活保障を守るための強力な権利が存在します。

それが、「遺留分(いりゅうぶん)」です。

この遺留分を無視して遺言書を作成すると、あなたの死後、相続人同士で泥沼の争いが勃発し、せっかくの遺言書がかえって家族を引き裂く原因になりかねません。

実際、裁判所には「遺留分」を巡る争いが年間何千件も持ち込まれています。

この記事では、行政書士が遺言書作成の最大のリスクである「遺留分」の仕組み、法改正による変更点、そしてトラブルを未然に防ぐための具体的な対策について底解説します。

円満な相続を実現するために、避けては通れない知識です。

まず、遺留分とは一体何なのか、なぜ存在するのかを理解しましょう。

素行が悪くても「最低限もらえる権利」

遺留分とは、一定の相続人に対して法律上保障された「最低限の遺産取得分」のことです。

たとえ遺言書に「全財産を愛人に遺贈する」「長男には一切相続させない」と書かれていても、配偶者や子供などの遺留分権利者は、「私の最低取り分(遺留分)をよこせ!」と請求することができます。

これは、残された家族の生活の安定を図るという目的のほか、遺産形成に貢献した家族の期待権を守るという意味合いがあります。

つまり、遺言書よりも遺留分の方が(部分的には)強いのです。

遺留分侵害額請求で金銭トラブルに発展

かつては「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」と呼ばれていましたが、2019年(令和元年)7月の民法改正により、「遺留分侵害額請求(しんがいがくせいきゅう)」へと仕組みが変わりました。

  • 改正前(減殺請求)
    遺留分として、不動産や株の「持ち分」を現物で返還請求できた。
    (不動産が共有状態になり、処理が大変だった)
  • 改正後(侵害額請求)
    遺留分に相当する額を「金銭」で請求する権利になった。

これにより、不動産の共有化は避けられるようになりましたが、逆に言えば、遺産(不動産など)を多くもらった人は、すぐに数百万円、数千万円という「現金」を用意して支払わなければならないという、別の重圧を背負うことになります。

遺留分は、すべての相続人にあるわけではありません。ここが非常に重要なポイントです。

兄弟姉妹には「遺留分がない」!

これが最も重要な知識の一つです。

遺留分が認められているのは、以下の人たちだけです。

  1. 配偶者(妻・夫)
  2. 直系卑属(子、孫など)
  3. 直系尊属(親、祖父母など)※子がいない場合のみ

兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪)には、遺留分はありません。

つまり、「子供がいない夫婦」の場合、夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言書を書けば、夫の兄弟姉妹から文句を言われる筋合いはなく、妻に100%確実に財産を残すことができます。

逆に、遺言書がないと兄弟姉妹にも相続権が発生してしまい、遺産分割協議が必要になってしまいます。

この点からも、お子様のいないご夫婦にとって遺言書作成は必須と言えます。

遺留分の割合(計算式)

では、具体的にどれくらい請求できるのでしょうか。

基本的には、「法定相続分の半分(2分の1)」が遺留分となります(※直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)。

≪よくあるケースの遺留分割合≫

スクロールできます
相続人の構成本来の法定相続分遺留分の割合
配偶者のみ配偶者 1/1配偶者 1/2
配偶者 + 子1人配偶者 1/2、子 1/2配偶者 1/4、子 1/4
配偶者 + 子2人配偶者 1/2、子 1/4ずつ配偶者 1/4、子 1/8ずつ
子2人のみ子 1/2ずつ子 1/4ずつ
配偶者 + 親配偶者 2/3、親 1/3配偶者 1/3、親 1/6
配偶者 + 兄弟配偶者 3/4、兄弟 1/4配偶者 1/2、兄弟 なし

例えば、遺産が4,000万円で、相続人が長男と次男の2人だけの場合。

遺言書に「長男に全て相続させる」とあっても、次男は本来の相続分(2,000万円)の半分である1,000万円を、長男に対して請求できます。

遺留分を侵害された側(もらえなかった側)からすると、この権利を行使するには厳格な期限(時効)があります。

知った時から「1年」の短期決戦

遺留分侵害額請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します。

  1. 相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間
  2. 相続開始の時(死亡時)から10年間

特に「知った時から1年」というのは非常に短いです。

「遺言書の内容には納得いかないけれど、四十九日が終わってから考えよう…」などとのんびりしていると、あっという間に期限が過ぎてしまいます。

請求する場合は、期限内に「内容証明郵便」などで意思表示をする必要があります。

逆に、遺言を書く側(財産を残す側)からすれば、「1年経てば時効で解決する」という見方もできます。

ここからが本題です。

遺留分という権利がある以上、特定の相続人に財産を集中させたい場合は、事前の対策が不可欠です。

行政書士が実務で提案する3つの方法を紹介します。

≪対策①≫
付言事項(ふげんじこう)で「心」に訴える

遺留分は法律上の権利ですが、行使するかどうかは本人の自由です。

そこで、遺言書の最後に「付言事項(メッセージ)」を書き添え、なぜこのような配分にしたのか、その想いを伝えます。

≪文例≫

長男の太郎は、長年にわたり家業を助け、私と妻の介護も献身的に行ってくれました。
その苦労に報いるため、自宅と事業用資産を太郎に相続させることにしました。
次男の次郎には少ない配分となりますが、生前に大学留学の費用を援助したことを考慮しました。
兄弟仲良く、助け合って生きていくことを父は望んでいます。
遺留分の請求はしないでほしい。

法的な強制力はありませんが、親の最期の言葉として、「お父さんがそこまで言うなら、請求はやめておこう」と子供に思いとどまらせる効果は絶大です。

≪対策②≫
生命保険活用で「遺留分の対象」から外す

死亡保険金(受取人指定があるもの)は、原則として相続財産には含まれません

受取人固有の財産とみなされるため、遺留分算定の基礎財産からも外れます。
(※著しく不公平な場合を除く)

≪活用法≫

例えば、現預金2,000万円を長男に渡したい場合、そのまま遺言で渡すと次男の遺留分対象になります。
しかし、これを原資に「契約者=父、被保険者=父、受取人=長男」という生命保険に入っておけば、この2,000万円は原則として遺留分計算の対象外となり、長男が全額受け取れる可能性が高まります。
また、もし次男から遺留分を請求されたとしても、長男はこの保険金を「代償金(支払うための現金)」として使うことができます。

≪対策③(難易度高)
生前に「遺留分の放棄」をしてもらう

相続開始前(生前)であっても、家庭裁判所の許可を得れば、相続人は遺留分を放棄することができます。

例えば、事業承継をする長男に株を集中させたい場合、次男に対して十分な生前贈与(教育資金や住宅資金など)を行う代わりに、次男に家庭裁判所で遺留分放棄の手続きをしてもらうのです。

ただし、裁判所は「放棄が本人の自由意志であるか」「見返り(代償)は十分か」を厳格に審査するため、単に「念書」を書かせるだけでは無効です。

必ず専門家の関与が必要です。

「どうしてもあのドラ息子には1円もやりたくない!遺留分すら渡したくない!」

極端なケースですが、虐待や重大な侮辱を受けた場合には、相続権そのものを剥奪する方法があります。

相続廃除(そうぞくはいじょ)

被相続人(遺言者)に対して、虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、著しい非行(犯罪行為や多額の借金トラブル等)があった推定相続人について、家庭裁判所に請求して相続権を剥奪する制度です。

遺言書に「長男を廃除する」という意思と理由を記載し、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てることで実行できます。

これが認められれば、遺留分も含めて一切の権利がなくなります。

ただし、裁判所の認定ハードルは非常に高いため、確実な証拠と正当な事由が必要です。

遺留分を侵害する遺言書自体は、無効ではありません。

有効ですが、「後で請求されるリスク」が残るだけです。

行政書士は、このリスクを極限まで減らすための設計図を描きます。

財産目録の正確性とシミュレーション

遺留分対策をするには、まず「財産総額」を正確に把握しなければなりません。

不動産評価額や生前贈与の持ち戻しなどを計算し、「もし次男が請求してきたら、いくら払う必要があるか」をシミュレーションします。

その上で、長男が支払不能に陥らないよう、現金の配分を調整したり、生命保険を組み合わせたりする提案を行います。

遺言執行者の指定による防波堤

遺留分トラブルが起きそうな案件こそ、遺言執行者(行政書士等の専門家)を指定しておくべきです。

執行者が間に入ることで、感情的な対立を和らげ、法的に淡々と手続きを進めることができます。

また、付言事項の趣旨を執行者から改めて相続人に伝えることで、遺留分請求の抑止につなげます。

兄弟にも遺留分があると聞きましたが?

いいえ、兄弟姉妹には遺留分はありません。
したがって、子供がいないご夫婦や独身の方の場合、遺言書を書くことで、兄弟姉妹に財産を渡さず、妻や特定の第三者(お世話になった人や団体)に全財産を確実に渡すことが可能です。

「遺留分を放棄する」という念書を子供に書かせました。有効ですか?

いいえ、生前に書かせた個人の念書は無効です。
生前に遺留分を放棄させるには、家庭裁判所の許可が必要です。
なお、相続発生後(死後)であれば、本人の意思による放棄は自由であり、念書も有効になり得ます。

遺贈寄付をしたいのですが、家族から文句が出ませんか?

ユニセフや赤十字、母校などに全財産を寄付する場合も、家族の遺留分を侵害すれば請求される可能性があります。
寄付を受ける団体側もトラブルを嫌うため、遺留分を考慮した範囲での寄付額に設定するか、事前に家族の承諾を得ておくことをお勧めします。

自分の財産をどうするかは自分の自由ですが、残された家族の絆を壊さない配慮もまた、遺言者の責任と言えるかもしれません。

  • 遺留分とは、配偶者・子・親に保障された最低限の遺産取り分であり、遺言書でも奪うことはできない。
  • 兄弟姉妹には遺留分がないため、子供のいない夫婦にとって遺言書は絶対的な効力を持つ。
  • 2019年の法改正により、遺留分侵害額請求は「金銭」での支払いが原則となったため、受取人(長男等)の資金繰り対策が必要。
  • トラブル回避には、「付言事項」で想いを伝える、「生命保険」で枠外の財産を作る、生前に「裁判所での放棄」を検討する等の対策が有効。
  • 遺留分を無視した独りよがりな遺言は「争族」の火種になる。行政書士と一緒に、法律と感情の両面に配慮した「バランスの良い遺言書」を作成しましょう。

「あいつにはやりたくない」という感情だけで突っ走らず、一度冷静になって専門家に相談してください。

あなたの想いを最大限に実現しつつ、家族が揉めない「賢い遺言書」の書き方を、私たちがアドバイスいたします。

ご相談は初回無料!お気軽にお問い合わせください。

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