相続トラブルの火種になる「遺産の分け方」
被相続人が亡くなり、戸籍の収集や相続人の確定が終わったら、次に必要になるのが「遺産分割協議書」の作成です。
これは、遺産を相続人の間でどのように分けるかを合意し、文書として残すものです。
実は、相続手続きにおける最大のトラブルポイントがこの“分割”の場面。
遺産分割協議書の内容や作り方を誤ると、あとから無効を主張されたり、金融機関で受理されなかったりするリスクがあります。
この記事では、行政書士の視点から「揉めない遺産分割協議書」の作り方を解説します。
遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、複数の相続人が、遺産の分け方について合意した内容をまとめた書面です。
全相続人の署名・押印(実印)をもって正式な効力を持ち、これがないと不動産登記や預金解約などの手続きが進められません。
✅ 遺産分割協議書が必要になる場面
- 不動産を特定の相続人が相続する場合
- 預金を分割して引き出す場合
- 株式・保険金などが複数人に関係する場合
- 相続人間の「特別受益」や「寄与分」を調整する場合
法的なルールと注意点
① 全相続人の合意が必要
たとえ相続人が1人だけ異議を唱えても、協議は成立しません。
行方不明者や認知症の方がいる場合は、家庭裁判所での「不在者財産管理人」「成年後見人」の選任が必要です。
② 法定相続分と異なる分割も可能
「長男が不動産をすべて相続」「二女がすべての預金を相続」といった法定分割とは異なる形も、全員が納得すれば有効です。
③ 書式の自由度は高いが、実務には形式あり
形式的には自由に作成できますが、金融機関や法務局が定める書式に沿っていないと受理されないことがあります。
行政書士に依頼するメリット
遺産分割協議書の作成は、自力でも可能ですが、行政書士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
✅ 1. 法的・実務的に通用する内容に
行政書士は、各金融機関などの実務要件を熟知しているため、「作ったけど通らない」という事態を避けられます。
✅ 2. 不足書類や記載ミスを防げる
誰が何を相続するか、誰の押印が必要か、日付・財産内容の記載ミスなどを未然に防ぎます。
✅ 3. 相続関係説明図・戸籍の流れと一貫対応
第2回・第3回で説明した戸籍収集や相続関係説明図と一体化して進められるため、手続きがスムーズです。
遺産分割協議でよくある3つのトラブル事例と対処法
❶ 相続人の1人が連絡を取らせてくれない
相続人の中に協議の場に応じない人がいる場合、遺産分割協議は成立しません。
このような場合は「内容証明郵便」で協議の申し入れをしたうえで、家庭裁判所に「調停」を申し立てる方法が有効です。
行政書士は調停申立書の作成はできませんが、調停に至る前の協議段階の整理や提案文案の作成支援が可能です。
❷ 生前贈与(特別受益)をめぐる争い
「長男だけに住宅資金を贈与していた」「学費を出してもらったのに、それは考慮しないの?」といった不公平感が原因でトラブルになることがあります。
→こうした場合、相続分の調整を含めた協議書の設計がカギとなります。
行政書士は、中立の立場で公平性を担保した文案を作成することで、感情のもつれを防ぐ役割を果たせます。
❸ 書面は作ったが、印鑑証明書を出してくれない
「協議には同意したけど、実印は押したくない」「印鑑証明は出さない」というケースもあります。
→遺産分割協議書は実印の押印と印鑑証明書がセットでなければ効力を発揮しないケースが多く、説得が困難な場合は、家庭裁判所による審判を検討する必要があります。
早期の段階で行政書士に相談し、相続人の信頼を得るための説明資料や手紙の文案などを整えると、円滑に進みやすくなります。
よくあるQ&A
Q. 公正証書にしないと無効?
→いいえ、公正証書でなくても、全相続人の署名・実印押印・印鑑証明書があれば有効です。
Q. 一人が財産を全部相続する場合でも必要?
→はい。
「他の相続人が放棄した」という意思表示を明確にするため、協議書で文書化する必要があります。
まとめ
遺産分割協議書は、相続人間の合意を証明する大切な書類です。
揉めないため、そして手続きをスムーズに進めるためにも、内容の正確さと形式の整備は不可欠です。
行政書士に依頼することで、戸籍の収集〜相続関係説明図〜遺産分割協議書の作成まで一括対応が可能になります。