第5回目テーマ:遺言作成の後にすべきこと
これまで4回にわたって、遺言書の重要性や作成のポイント、特に必要なケースについてお伝えしてきました。
しかし、遺言書を作成しただけでは十分ではありません。
適切に保管し、状況に応じて見直すことが大切です。
今回は、遺言書を作成した後にすべきことを解説します。
1. 遺言書の保管方法を決める
せっかく作成した遺言書が紛失したり、改ざんされたりすると無効になってしまいます。
適切な場所に保管し、信頼できる人にその存在を伝えておくことが重要です。
✅ 保管方法の選択肢
保管方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自宅で保管 | 費用がかからず手軽 | 紛失・盗難・改ざんのリスクがある |
法務局(自筆証書遺言のみ) | 安全に保管でき、家庭裁判所の検認が不要 | 手続きが必要、費用がかかる(1通3,900円) |
公証役場(公正証書遺言のみ) | 紛失・改ざんの心配がない | 手続きに費用がかかる |
信頼できる人に預ける | 相続人に確実に見つけてもらえる | 改ざん・紛失のリスクがある |
専門家に依頼 | 確実に保管される | 費用が発生する |
公正証書遺言は公証役場で保管されるため安心ですが、自筆証書遺言の場合は法務局に預けるのが最も安全な方法です。
2. 遺言書の存在を信頼できる人に伝える
遺言書が適切に保管されていても、相続人がその存在を知らなければ意味がありません。
信頼できる家族や遺言執行者に伝えておきましょう。
✅ 伝えておくべきこと
- 遺言書の種類(自筆証書遺言、公正証書遺言 など)
- 保管場所(法務局、公証役場、自宅 など)
- 遺言執行者がいる場合、その連絡先
特に、法務局に保管した場合は遺言書があることを家族に伝えておくことが大切です。
3. 遺言書を定期的に見直す
人生の状況は変化するため、遺言書の内容が現状に合わなくなることがあります。
定期的に見直し、必要に応じて修正することが大切です。
✅ 見直すべきタイミング
- 結婚・離婚したとき(配偶者に関する相続内容の変更)
- 子どもが生まれたとき(相続人が増える)
- 相続人に変更があったとき(相続人の死亡 など)
- 財産の状況が変わったとき(不動産の売却、新たな資産の取得 など)
- 法改正があったとき(相続税や遺言制度の変更)
✅ 遺言書の修正方法
- 新しい遺言書を作成する(日付を最新にし、以前の遺言を撤回する旨を記載)
- 遺言書に訂正を加える(自筆証書遺言のみ)(訂正には法律上のルールがあるため注意)
新しい遺言書を作成する際は、古い遺言書の存在を明確に否定する文言を入れることが重要です。
4. 遺言執行者を決めておく
遺言を確実に実行するためには、「遺言執行者」を指定しておくと安心です。
🟠 遺言執行者とは?
遺言の内容を実際に執行する役割を持つ人で、通常は相続人や専門家などが選ばれます。
✅ 遺言執行者を指定するメリット
- 相続手続きがスムーズに進む
- 遺言の内容が適切に実行される
- 相続人間の争いを防ぐことができる
遺言執行者を指定していない場合、相続人全員の同意が必要になることがあるため、トラブルを防ぐためにも専門家を指定するのが望ましいです。
5. 遺言書が発見されたときの手続き
遺言書を適切に管理していても、相続人が正しい手続きを知らなければスムーズに相続が進まないことがあります。
特に自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要な場合があるため注意が必要です。
✅ 遺言書が見つかったら?
- 公正証書遺言 → そのまま相続手続きへ進める
- 自筆証書遺言(法務局で保管していない場合) → 家庭裁判所で「検認」の手続きが必要
- 秘密証書遺言 → 家庭裁判所の検認が必要
検認をせずに開封すると、5万円以下の過料(罰金)が科されることがあるため、相続人にも正しい手続きを伝えておきましょう。
まとめ
遺言書は作成しただけでは不十分で、適切に管理し、必要に応じて見直すことが大切です。
✅ 遺言書作成後にすべきこと
1️⃣ 適切に保管する(法務局、公証役場、自宅 など)
2️⃣ 信頼できる人に存在を伝える(家族、弁護士 など)
3️⃣ 定期的に見直す(家族構成や財産状況の変化に対応)
4️⃣ 遺言執行者を指定する(スムーズな相続手続きのため)
5️⃣ 遺言書が発見されたときの手続きを確認しておく(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要)
遺言書をしっかりと管理し、家族や大切な人たちが安心して相続を進められるように準備しておきましょう。
シリーズまとめ
全5回にわたって、「遺言書作成が必要な理由」について解説してきました。
遺言書は、大切な人たちが相続で困らないために必要なものです。
早めの準備を心がけ、自分の想いをしっかりと形に残しましょう。
もし遺言書の作成や管理に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!