はじめに:遺言とエンディングノート、混同していませんか?
「エンディングノートを書いたから、もう遺言は必要ないですよね?」
そんなご質問をよくいただきます。
たしかに、どちらも「人生の最期に向けた備え」という点では似ています。
しかし、この2つはまったく役割が異なります。
- 遺言書:法律上の効力を持つ「法的文書」
- エンディングノート:気持ちや希望を伝える「自由記述のノート」
この違いを正しく理解し、目的に応じた使い分けをすることが大切です。
まずは定義の確認:遺言書 vs エンディングノート
項目 | 遺言書 | エンディングノート |
---|---|---|
法的効力 | あり(法律で定められた形式が必要) | なし(希望・記録を残すためのもの) |
書き方の自由度 | 法律に従う必要あり | 自由に記述できる |
主な目的 | 財産の分配、相続、後見人指定など | 家族への想いや連絡事項、希望 |
書くタイミング | 意思がはっきりしているうちに | 日々の気づきの中で随時 |
更新の手続き | 最新の有効な遺言が優先される | 自由に書き換え可 |
【遺言書】は「法的な決定事項」を残すツール
遺言書の最大の特徴は、法律上の効力があるという点です。
そのため、財産分与や法定相続人以外への遺贈など、実際の「行動」に直結する内容は遺言書で記載すべきです。
たとえば以下のようなことは、遺言でしか効力を持ちません:
- 「長男には事業を、次男には不動産を相続させたい」
- 「特定の人に寄付・遺贈したい」
- 「内縁の妻に生活費を遺したい」
- 「認知した子に財産を渡したい」
- 「未成年の子の後見人を●●に指定する」
🧾 ポイント:内容によっては、遺言がなければ一切反映されない
➡ つまり、書いておかないと「何も伝わらない・残せない」可能性があるのです。
【エンディングノート】は「想い」と「情報整理」のツール
一方、エンディングノートは気持ちや意思を“非公式に”伝える手段です。
形式に決まりがないため、気軽に書き始めることができます。
書いておくと便利な内容:
- 医療や介護についての希望(延命治療は望むか等)
- 葬儀やお墓についての希望
- デジタル遺産(SNSやネット口座など)の情報
- 親しい友人や取引先への連絡先リスト
- 家族への感謝の言葉やメッセージ
🖊 ポイント:法的効力はないが、家族の「判断の助け」になる
葬儀の方針や財産の所在、医療方針など、
家族が悩む場面で「本人の意志」が残っていることは何よりもありがたいものです。
両方を活用する「ハイブリッド型」が理想!
✅ 遺言書で法律面をカバーし、エンディングノートで気持ちを補う。
これが今、専門家の間で推奨されているスタイルです。
たとえばこんな分担:
内容 | 遺言書に書く | エンディングノートに書く |
---|---|---|
財産の配分 | ○ | 補足説明・理由を記載 |
葬儀やお墓の希望 | × | ○ |
デジタル資産(パスワードなど) | ×(法的効力は限定的) | ○ |
家族への感謝・メッセージ | × | ○ |
医療・介護の方針(延命など) | × | ○ |
飼っているペットのこと | 遺贈・後見人指定は○ | お世話の詳細など補足 |
⚠ エンディングノートに財産配分だけを書いても、法的には無効です。
→ 必ず「遺言書」としての形式で残しましょう。
書き始める順番:エンディングノートからがオススメ
いきなり遺言書から入ろうとすると、
「何を書けばいいのかわからない」「ハードルが高い」と感じる方も多いでしょう。
そんなときは、まずはエンディングノートで頭の中を整理するのが有効です。
- 自分の財産の一覧を書いてみる
- 気になる人・支援したい人の名前を書き出す
- どんな医療や葬儀を望むかを想像してみる
書いていくうちに、
「これは法的に書いておいた方がいいかも」と気づく項目が出てくるはずです。
そこから遺言書の検討に入ることで、内容に一貫性のある“ブレない遺言”が完成します。
おわりに:「伝える手段を複数持つ」ことが家族への愛
人は、言葉にしないと伝わらない。
そして、書いておかないと「残らない」のです。
- 遺言書は「法的に意思を実行する手段」
- エンディングノートは「家族の心を支える道しるべ」
どちらか一方では不十分。
両方をバランスよく使うことで、“想い”も“安心”も残せる終活の形が実現します。
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