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建設業許可は事業拡大の必須条件
建設業を営む皆様にとって、「建設業許可」は事業の信頼性を高め、受注規模を拡大するために不可欠な公的な証明です。
特に、500万円(税込)以上の工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上または延べ面積150㎡以上の木造住宅)を請け負う場合、この許可がなければ法律違反となってしまいます。
しかし、建設業許可の申請は、その要件の複雑さ、必要書類の多さ、そして行政の審査基準の厳しさから、初めての方にとって非常に高いハードルとなりがちです。
この記事では、行政書士としての専門的な視点から、建設業許可の基本から、許可を取得するために満たすべき「七大要件」の詳細、申請の具体的なステップ、そして申請後に継続的に発生する義務までをわかりやすく解説します。
この解説が、貴社の事業を次のステージに進めるための確実な一歩となることを願っております。
建設業許可の基礎知識と区分を理解する
建設業許可は、建設業法(昭和24年法律第100号)に基づき、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するために設けられた制度です。
許可が必要な「請負金額」の基準
許可の要否を分けるのは、工事一件あたりの請負代金です。
この金額を超過する工事を請け負う場合、必ず許可が必要です。
≪許可が必要な工事の基準≫
(いずれか一つでも該当すれば許可が必要)
- 一般工事
工事一件の請負金額が500万円(税込)以上 - 建築一式工事
工事一件の請負金額が1,500万円(税込)以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅
「一般」と「特定」— 許可区分の違い
建設業許可には、発注者から直接工事を請け負った(元請)場合に、下請に発注する金額によって「一般建設業」と「特定建設業」の2つの区分が存在します。
| 区分 | 対象となる工事の規模と役割 | 求められる要件の厳しさ |
| 一般建設業許可 | 主に中小規模の工事を請け負う場合。元請として下請に発注する場合でも、下請への発注総額が5,000万円未満(建築一式は8,000万円未満)の場合。 | 特定に比べると緩やか。ほとんどの事業者がここからスタートします。 |
|---|---|---|
| 特定建設業許可 | 元請として請け負った一件の工事について、下請に発注する総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)となる場合。 | 資本要件など、一般よりも厳格な要件が課せられます。 |
許可の区分:「知事許可」と「大臣許可」
営業所を設置する都道府県の数によって、許可を与える行政庁が異なります。
- 知事許可
一つの都道府県内にのみ営業所を設置して営業する場合。
(例:東京都内にのみ営業所がある) - 大臣許可
二つ以上の都道府県に営業所を設置して営業する場合。
(例:東京都と神奈川県に営業所がある)


建設業許可取得のための
『7大要件』を徹底解説
建設業許可は、単なる申請ではなく、建設業法が定める極めて重要な7つの要件(7大要件)すべてをクリアしなければ取得できません。
この要件を満たしていることを、各種の公的書類によって証明する必要があります。
≪要件①≫
経営業務の管理責任者(経管)の設置
適正な経営体制を証明するため、経営業務を総合的に管理できる者(経管)を常勤で配置することが必要です。
- 求められる経験
原則として、法人の常勤役員や個人事業主として、許可を受けようとする建設業に関し、5年以上の経営経験があることなどが求められます。
(2020年以降、要件は緩和され、補佐経験などでも認められるケースがあります。) - ポイント
単なる取締役であるだけでなく、「経営を統括する実質的な地位」にあることが証明できなければなりません。
≪要件②≫
専任技術者(専技)の設置
請け負った工事を技術的に管理する能力を証明するため、営業所ごとに、一定の資格や経験を持つ技術者(専技)を常勤で配置することが必要です。
- 求められる要件
- 指定された国家資格を保有していること。
(例:1級・2級施工管理技士、建築士など) - または、申請する業種について10年以上の実務経験を有していること。
(学歴によって短縮される場合あり)
- 指定された国家資格を保有していること。
- ポイント
経管と専技は、兼任が可能なケースもありますが、いずれも「常勤性」が厳しく審査されます。
≪要件③≫
誠実性
請負契約の履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないことが求められます。
- 具体例
過去に請負契約に関して詐欺、脅迫、横領などの法律違反を犯していないこと。法人の役員や個人事業主、専任技術者などが該当します。
≪要件④≫
財産的基礎・金銭的信用
事業を継続的に行うための経済的な基盤があることを証明する必要があります。
- 一般建設業
- 自己資本の額が500万円以上であること。
- または、500万円以上の資金調達能力があること。
(預金残高証明書などで証明)
- 特定建設業
一般建設業よりもさらに厳しい基準が設けられています。
(欠損の額、流動比率、資本金など)
≪要件⑤≫
欠格要件に該当しないこと
申請者や役員などが、以下のような欠格事由に該当しないことが必要です。
- 過去に建設業法違反により許可を取り消されてから5年を経過していないこと。
- 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていないこと。
- 暴力団員等でないこと。
(反社会的勢力の排除)
≪要件⑥≫
適切な事務所の確保
建設業の営業を行うための事務所(営業所)が確保されていることが必要です。
- ポイント
単に住居と兼用しているだけでなく、他の者と明確に区分され、契約の締結や書類の管理ができる実態があることが求められます。
(看板、事務機器の設置、独立した出入口など)
≪要件⑦≫
社会保険への加入
法人の場合、厚生年金保険、健康保険、雇用保険への加入が義務付けられており、未加入の事業者は原則として許可を受けられません。
(※個人事業主については要件が異なります)
建設業許可取得の具体的な流れと期間
七大要件を満たしていることが確認できたら、いよいよ申請手続きに入ります。
専門家によるサポートを受ける場合でも、申請の大まかな流れを把握しておくことが重要です。
| ステップ | 内容 | 期間(目安) |
| 1. 要件チェックと準備 | 七大要件を満たしているかを確認。不足している場合は、経管・専技の配置や資金調達を計画します。 | 1週間~数ヶ月(事業者の状況による) |
|---|---|---|
| 2. 必要書類の収集 | 登記簿謄本、納税証明書、経管・専技の経験を証明する契約書や保険証など、膨大な公的書類を収集します。 | 2週間~1ヶ月 |
| 3. 申請書類の作成 | 建設業許可申請書(様式第1号)をはじめとする数十枚に及ぶ申請書類一式を作成します。 | 1週間~2週間 |
| 4. 申請書の提出 | 知事許可は都道府県庁、大臣許可は地方整備局へ提出します。窓口での形式審査が行われます。 | 1日 |
| 5. 行政庁による審査・補正 | 提出後、行政庁の担当者による実質的な審査が行われます。書類に不備があった場合、補正(修正・追加提出)が求められます。 | 30日~45日程度(標準処理期間) |
| 6. 許可証の交付 | 審査を通過すれば、許可が下り、許可証が交付されます。 | – |
失敗しないための「よくある落とし穴」
多くの申請者がつまずくポイントは、「七大要件を証明する書類の不備」にあります。
- 証明書類の不足
経管や専技の実務経験を証明する当時の契約書、請求書、入金確認書類などが不足し、実務経験が認められないケース。 - 常勤性の立証の失敗
専任技術者が他の会社の役員を兼任していたり、社会保険の加入状況から常勤性が疑われたりするケース。 - 財務要件の誤解
自己資本500万円の基準を一時的な残高証明だけでクリアしようとし、期末の決算書では満たせていないケース。
行政書士に依頼することで、これらの「証明の壁」をクリアするための確実なサポートを得ることができます。
許可取得後の「義務」と継続的な手続き
建設業許可は、一度取得すれば終わりではありません。建設業法により、許可を受けた後も、事業者は様々な義務を負うことになります。
許可後の継続的な手続きを怠ると、最悪の場合、許可の取り消しにつながるリスクもあります。
許可を維持するための3つの重要義務
- 毎年の決算報告(決算変更届)
- 毎事業年度終了後、必ず4ヶ月以内に事業年度終了届(決算変更届)を提出する義務があります。
これを怠ると、5年後の更新手続きができなくなります。
- 毎事業年度終了後、必ず4ヶ月以内に事業年度終了届(決算変更届)を提出する義務があります。
- 変更が生じた場合の届出
- 役員、本店所在地、資本金、専任技術者など、許可内容に変更があった場合、変更から原則として2週間~30日以内に変更届を提出しなければなりません。
- 5年ごとの更新手続き
- 建設業許可の有効期間は5年間です。
有効期間満了日の3ヶ月前から30日前までに更新申請を行う必要があります。
更新を忘れると、許可は失効し、軽微な工事しか請け負えなくなります。
- 建設業許可の有効期間は5年間です。
これらの義務を正確に履行し続けることが、事業の信頼性を継続的に高めることにつながります。


許可取得後の事業拡大に向けたステップ
建設業許可を取得した後、事業拡大の選択肢は大きく広がります。
- 特定建設業へのステップアップ
大規模な元請工事を視野に入れる場合。 - 業種追加
現在請け負っていない新たな業種の工事を受注する場合。 - 経審・入札参加
公共工事の受注を目指す場合、経営事項審査(経審)を受け、入札参加資格審査申請を行う必要があります。
これらすべての手続きにおいて、行政書士は事業者の継続的なパートナーとして、最適なアドバイスと手続きの代行を提供することが可能です。
この記事のまとめ
建設業許可の取得は、単なる行政手続きではなく、事業の信頼性を飛躍的に高め、大規模な工事の受注を可能にする事業拡大の「登竜門」です。
七大要件の厳格さから個人での申請は困難を伴いますが、専門家を活用することで、そのプロセスは確実かつ迅速になります。
- 建設業許可は、500万円以上の工事を請け負うために建設業法で定められた必須の許可です。
- 許可を取得するには、経営業務の管理責任者、専任技術者、財産的基礎など、七大要件をすべて満たす必要があります。
- 申請手続きは、書類収集から審査・補正対応まで、通常1~2ヶ月の期間を要し、多くの証明書類が必要です。
- 行政書士に依頼することで、要件チェックの精度が向上し、書類不備による不許可リスクを最小限に抑えることができます。
- 許可取得後も、5年ごとの更新、毎年の決算報告、変更届など、許可を維持するための継続的な義務が発生します。
建設業許可の取得は、貴社の事業が法律に基づき適正に運営されていることの証明であり、社会的な信用を勝ち取るための最も確かな方法です。
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