遺言書を書いたことで、
「もうこれで安心」──そう思っていませんか?
実は、遺言書は“書いたあと”が本番です。
内容を確実に実現させるには、“遺言執行者”の存在がとても重要です。
✅ 「そもそも遺言執行者って何?」
✅ 「家族に任せればいいの?」
✅ 「専門家に頼むと費用は?」
✅ 「指定しないとどうなる?」
こうした疑問にお答えしながら、
今回は「遺言執行者」について基礎から詳しく解説します。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言の内容を実際に“実行”する役目の人です。
相続人や関係者に代わり、遺言書に書かれた指示を法的に遂行します。
たとえば次のようなことを行います:
- 相続財産の調査・目録作成
- 預貯金の解約・移転
- 不動産の名義変更手続き
- 遺産分割の執行
- 相続人や受遺者への連絡・配分
- 戸籍や書類の収集
- 寄付(遺贈)の実施
- 未成年の認知や相続人の排除・廃除など
✅ 遺言内容が複雑になるほど、専門知識と実務能力が求められます。
指定しないとどうなる?
遺言書に遺言執行者が指定されていない場合、
遺言書の内容によっては、相続人などが家庭裁判所に選任を申し立てる必要があります。
すると──
- 手続きが遅れる
- 相続人間で誰がやるか揉める
- 事務負担が家族にのしかかる
- 第三者が選ばれてしまい不本意な結果に…
こうした“遺言の空白時間”を生まないためにも、
最初から「この人に任せたい」と決めておくことが重要です。
遺言執行者に「なれる人」と「なれない人」
原則、誰でも指定できますが、以下のポイントに注意しましょう。
なれる人 | 注意点 |
---|---|
相続人本人 | 公平性や感情的トラブルの懸念あり |
親族・友人 | 責任が重く、断られることも多い |
弁護士・司法書士・行政書士 | 専門知識・第三者性あり、信頼度が高い |
法人(事務所など) | 継続性があり、長期的な管理にも対応可能 |
※15歳未満や成年被後見人はなれません。
家族に任せる?専門家に依頼する?
それぞれにメリット・デメリットがあります。
🔸家族・親族に任せる場合
メリット:
- 信頼関係がある
- 報酬が不要(ことが多い)
- 相続の意志をよく知っている
デメリット:
- 感情的なトラブルに巻き込まれやすい
- 手続きが煩雑で精神的・時間的負担が大きい
- 他の相続人と対立することも
🔸専門家に依頼する場合
メリット:
- 中立・客観的立場
- 手続きがスムーズ、法律・税務も安心
- 確実な執行と証拠保全が可能
デメリット:
- 報酬がかかる(相場は数万円〜財産により変動)
- 執行のスピードや対応力は事務所により差がある
遺言書への記載例
遺言執行者は、遺言書の中で明確に記載します。
📌記載例(公正証書遺言の場合):
第◯条 遺言執行者として、○○県○○市在住の行政書士 加藤太郎(生年月日:19XX年X月X日)を指定する。
住所:○○県○○市○丁目○番地
この遺言の執行に関して一切の権限を有するものとする。
✅ 氏名・住所・生年月日はできるだけ正確に記載しましょう。
遺言執行者の「報酬」はどうなる?
法律では、執行者に報酬を払う義務はありません。
ただし、以下の方法で定めるのが一般的です。
- 遺言書に報酬額を明記(例:「報酬として30万円を支払う」)
- 相続人の話し合いで決める(相場は財産額の1〜3%程度)
- 家庭裁判所が相当額を決定(申立てが必要)
✅ 無報酬の場合でも、実費(交通費、印紙代など)は請求可能です。
まとめ:執行者を「誰にするか」で遺言の実現度が変わる
- 遺言執行者は、遺言内容の実現を担う法的に重要な役割
- 指定しないと、手続きが遅れたり揉めるリスクが増す
- 家族に任せる場合は負担とトラブルリスクに注意
- 専門家に依頼することで安心・確実な執行が可能
✅ 遺言は「書いて終わり」ではなく、
✅ 「確実に実行されること」が本当の目的です。
遺言書作成時には、「誰が実行するのか」まで考えるのが新常識です。