建設業許可を取得するためには、経営業務の管理責任者がいることや専任技術者がいることなどの要件がありますが、それだけでは足りません。
「誠実性があること」と「欠格要件に該当しないこと」という、人や会社の信用性を判断する条件を満たしている必要があります。
今回は、特に見落とされやすいこの2つの要件について、東京都の手引きとQ&Aをもとに詳しく解説します。
「誠実性があること」とは?
法律上の意味
建設業法第7条では、建設業許可を受ける者は「請負契約に関して誠実性を有すること」と定められています。
ここでいう「誠実性」とは、契約や工事の履行に関して信頼できる人物・会社であることを意味します。
誠実性が欠けると判断される例
- 過去に建設業法違反や重大な契約違反があった
- 無許可営業で500万円を超える工事を行った
- 下請代金の不払いを繰り返している
- 虚偽の契約書や申請書を作成している
- 労働安全衛生法や建築基準法違反の常習がある
こうした事例があると「誠実性なし」と判断され、許可が下りません。
実務上のチェックポイント
東京都の審査では、以下がよく確認されます。
- 過去に行政処分を受けていないか
- 許可申請書や決算書に虚偽記載がないか
- 契約トラブルや未払い問題がないか
「取引先や発注者から見て信頼できるか」という観点で判断されるのです。
「欠格要件に該当しないこと」とは?
欠格要件とは?
建設業法では、申請者が一定の条件に当てはまると許可を受けられないと定めています。これを「欠格要件」と呼びます。
欠格要件は、事業者本人だけでなく、役員や主要株主、支配人など経営に関与する人物も対象となります。
欠格要件の主な内容
- 成年被後見人・被保佐人である場合
判断能力に制限があるとされる場合、許可は不可。 - 破産手続開始の決定を受け復権していない場合
倒産状態で整理が終わっていない会社は不可。 - 禁錮以上の刑を受け、5年以内に復権していない場合
例:詐欺や横領、暴力事件などで実刑判決を受けた場合。 - 建設業法違反により処分を受けてから一定期間が経過していない場合
無許可営業や虚偽申請などで処分歴があると欠格。 - 暴力団関係者である場合
反社会的勢力と関わりがあると欠格。 - 社会保険未加入の場合
法人や常時使用する従業員が5人以上の個人事業主は、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入義務があります。
加入していないと欠格要件に該当することがあります。
欠格要件が及ぶ範囲
- 代表取締役
- 取締役・監査役など役員
- 使用人(支店長や営業所長)
- 主要株主(総株主の議決権の5%以上を持つ場合)
つまり、会社の表に出る人だけでなく、経営に影響力を持つ人物すべてが審査対象です。
「誠実性・欠格要件」の具体例(内装仕上工事業)
たとえば、内装仕上工事業で建設業許可を申請する場合。
- 誠実性:過去に請負契約でトラブルがなく、内装工事の施工実績に不備がないこと。
- 欠格要件:代表取締役や主要株主に、暴力団関係や法令違反の経歴がないこと。
もし代表者が以前に無許可でクロス貼り工事(500万円超)を受注していた場合、それが記録に残っていれば欠格要件に該当する可能性があります。
よくある誤解と注意点
誤解①:個人事業主なら軽く見られる?
→ 個人事業主であっても、誠実性と欠格要件は同じ基準で審査されます。
誤解②:過去に罰金を払ったことがあると絶対ダメ?
→ 罰金刑や軽微な違反歴が直ちに欠格要件になるわけではありません。内容と時期によります。
誤解③:役員の一人に問題があっても大丈夫?
→ 役員1人でも欠格要件に該当すれば、会社全体が不許可となります。
誠実性と欠格要件をクリアするための実務対策
✅ 社会保険に必ず加入する
✅ 過去の行政処分や違反歴があれば、時効や復権の有無を確認
✅ 役員や主要株主の経歴を事前に調査
✅ 契約トラブルを未然に防ぐため、契約書を必ず作成
「事前確認」と「記録の整備」が、許可取得の近道です。
まとめ:信用こそが許可取得の前提条件
建設業許可における「誠実性」と「欠格要件」は、
- 会社や代表者が信頼できるか
- 反社会的勢力や法令違反に関わっていないか
を審査するものです。
いくら技術や資金力があっても、信用に問題があれば許可は下りません。
まさに「信頼性が土台」ということです。