建設業許可の根幹!「誠実性」と「欠格要件」完全解説—東京都で最も厳しくチェックされるコンプライアンスの壁

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技術や資金よりも重要な「信用力」の証明

建設業許可の要件というと、「経営経験(常勤役員等)」や「技術者(専任技術者)」、「資金力(財産的基礎)」に注目が集まりがちです。

しかし、これらの要件を満たしていても、「誠実性があること」と「欠格要件に該当しないこと」という信用・コンプライアンスに関する要件を満たさなければ、許可は絶対に下りません。

これらは、企業が発注者や社会に対して信頼に足る存在かを判断する、許可の根幹となる条件です。

特に近年、法令遵守意識の高まりと、社会保険の適正加入の義務化により、この2つの要件の審査はますます厳格化しています。

この記事では、建設業法および東京都の許可手引に基づき、これらの要件の具体的な内容、審査対象となる人物の範囲、そして許可を確実にするための事前対策を徹底的に解説します。

「誠実性」とは?
契約の履行と法令遵守の証明

建設業法第7条第3号は、「請負契約に関して誠実性を有すること」を許可の基準として定めています。

誠実性の法的定義と審査対象者

誠実性とは、請け負った工事を契約通りに履行する能力と、法令を遵守する姿勢があることを意味します。

この要件は、以下の人物全員について審査されます。

  1. 申請者本人(法人または個人事業主)
  2. 法人の役員(取締役、監査役など)
  3. 支配人
  4. 令3条の使用人(支店長、営業所長など、契約締結権限を持つ者)

これらの人物が過去に以下の行為を行っていないか、行政庁によって厳しくチェックされます。

誠実性が「欠ける」と判断される具体的例

以下の行為は、請負契約に関する不正または不誠実な行為と見なされ、誠実性が欠如していると判断されます。

  • 建設業法違反
    無許可で法定以上の工事を請け負った、下請代金の不当な減額や不払い、不適正な見積・契約締結を行った。
  • 詐欺・脅迫
    請負契約の締結や履行に際して、詐欺、脅迫、横領などの犯罪行為を行った。
  • 重大な契約不履行
    工事の著しい遅延、手抜き工事、請負代金の不当な請求など、重大な契約トラブルを頻繁に起こした。
  • 虚偽申請
    許可申請書や添付書類(決算書、契約書など)に虚偽の記載を行った。

≪東京都のチェックポイント≫
東京都の審査では、過去の行政処分歴や労働安全衛生法、建築基準法などの他法令違反歴も参考に、申請者のコンプライアンス体制を総合的に判断されます。
虚偽申請は、発覚した時点で不許可となるだけでなく、欠格要件(不正行為)にも該当するリスクがあります。

「欠格要件」とは?
排除すべき人物・事由の徹底確認

建設業法第8条に定められている欠格要件は、特定の人物や事由に該当する場合、問答無用で許可が与えられないとする、最も絶対的な要件です。

欠格要件が適用される人物の範囲
(全員アウトの原則)

誠実性と同様に、申請者本人、役員(取締役等)、支配人、令3条の使用人(支店長等)のいずれか一人でも以下の欠格要件に該当した場合、会社(法人)全体が不許可となります。

主要な欠格要件と「5年」の期間

欠格要件の主な内容は以下の通りです。特に期間の制限が重要です。

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欠格要件内容期間制限
刑罰禁錮以上の刑、または建設業法・労働基準法など特定の法令違反により罰金刑に処され、その刑の執行が終わってから(または執行猶予期間満了から)5年を経過していない者5年
許可取消処分建設業許可を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者5年
成年被後見人等成年被後見人、被保佐人、または破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者復権まで
暴力団関係者暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者5年
社会保険未加入法令上の加入義務があるにもかかわらず、健康保険、厚生年金保険、雇用保険のいずれかに未加入である法人や個人事業主。適用

【最重要コンプライアンス】
社会保険未加入は「欠格要件」に直結する

近年、最も欠格要件に該当するリスクが高いのが社会保険の未加入です。

  • 対象者
    法人のすべての事業所、または常時使用する従業員が5人以上の個人事業主。
  • 影響
    これらの事業者が法令上の社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)に加入していない場合、欠格要件に該当し、許可が下りません。
  • 対策
    許可申請の時点で、適用事業所通知書や保険料の領収証書の写しなどを提出し、適正な加入を証明することが必須です。

東京都知事許可における
実務上のチェックと事前対策

誠実性・欠格要件は、申請書類の裏付けとなる役員や主要株主の経歴が非常に重要になります。

東京都の審査で特に注意すべき実務上のポイントを解説します。

審査対象者「主要株主」の定義と調査範囲

欠格要件の審査対象には「主要株主」が含まれます。

  • 定義
    発行済み株式の総数または総出資額の5%以上を有する株主または出資者を指します。
  • 対策
    株主構成を把握し、5%以上の株式を保有する人物については、事前に欠格要件に該当する経歴がないか、本人からの誓約書などをもって確認しておく必要があります。

過去の「軽微な違反」の取り扱い

過去に交通違反の罰金軽微な行政処分を受けたことがある場合、「すぐに欠格になるのか?」と不安に感じる方がいます。

  • 判断基準
    欠格要件となる罰金刑は、建設業法や暴力団対策法など、建設業の経営の公正性や社会の安全に関わる特定の法令違反によるものです。
  • 実務上の対策
    過去に罰金や行政処分がある場合は、処分内容、法令の条文、処分が確定した年月日を正確に確認し、欠格期間(5年間)が経過しているかを行政書士とともに厳密に判断する必要があります。
    自己判断は避け、必ず専門家の助言を得てください。

契約トラブルを防ぐ「予防法務」の徹底

誠実性を確保し、将来的な行政処分リスクを避けるためには、契約書を厳格に運用する「予防法務」の徹底が不可欠です。

  • 契約書の整備
    請負契約書は、建設業法24条の3に定められた必要事項(工事内容、請負代金の額、支払い方法、工期など)をすべて含め、必ず書面で交わす。
  • 下請保護
    下請代金の支払い期日、材料の提供などについて、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の規定を遵守する。

誠実性の確保は、一過性の書類準備ではなく、日々の契約管理とコンプライアンス体制の継続的な運用によって証明されるものなのです。

この記事のまとめ

建設業許可を取得するための「誠実性」と「欠格要件」は、申請者およびその主要な関係者が、法令を遵守し、社会的な信用を失う行為をしていないかを審査するものです。

特に、禁錮刑や特定の罰金刑から5年間の期間、および社会保険の適正な加入は、許可取得の可否を決定づける絶対的なチェックポイントです。

  • 誠実性は、過去に建設業法違反や詐欺、契約不履行といった不正・不誠実な行為がないかを審査する要件であり、虚偽申請はこれに該当します。
  • 欠格要件は、役員、支配人、令3条の使用人、主要株主のいずれか一人でも該当すると、会社全体が不許可となる絶対的要件です。
  • 最も注意すべき欠格事由は、特定の刑罰や許可取消処分から5年を経過していないこと、および社会保険(健保、厚年、雇用)への未加入です。
  • 主要株主(議決権の5%以上を保有)も欠格要件の審査対象に含まれるため、その経歴を事前に確認し、反社会的勢力との関わりがないことを証明する必要があります。
  • 許可取得後も、誠実性・欠格要件を維持するためには、契約書面の適正な作成下請代金の確実な支払いなど、継続的なコンプライアンスの徹底が不可欠となります。

建設業許可の取得は、単に事業の規模を拡大するだけでなく、企業の社会的信用と法令遵守体制を第三者に証明する行為であり、この信用こそが、永続的に事業を継続するための生命線となるのです。

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