目次
【はじめに】
「銀行の口座ってどうやって相続するの?」
「通帳があるのにお金を引き出せないのはなぜ?」
身近な方が亡くなった後、意外と多くの方がつまずくのが金融機関での相続手続きです。
死亡によって口座は一時的に凍結され、相続手続きが完了するまで払戻しや名義変更はできません。
今回は、相続預金の払い戻しや名義変更のために必要な書類、手続きの流れを行政書士の視点で解説します。
【1】口座は死亡するとどうなる?
被相続人が亡くなると、金融機関がその事実を把握した時点で口座は凍結されます。
その後、遺産分割が完了し、手続きが整うまでの間は出金・解約ができません。
凍結後の扱いは以下の2通りです:
- 相続人全員の同意のもとで名義変更や払戻し
- 遺言書に基づいて遺言執行者が手続きする場合
【2】【特例】遺産分割前の相続預金の払戻し制度(民法909条の2)
平成30年の民法改正により、遺産分割が未了でも一部の預金が払戻し可能となりました。
▶️ 制度の概要
- 相続人単独で払戻し可能(※家庭裁判所の手続き不要)
- 限度額:
①相続開始時の預金残高 × 1/3 × その相続人の法定相続分
②金融機関ごとに上限150万円
いずれか少ない額
▶️ 例)相続人A(子1人)、預金残高300万円
→ 300万円 × 1/3 × 1(法定相続分)=100万円
→ 100万円が上限として単独で払戻し可能
💡あくまで「一時的な生活費や葬儀費用」のための制度であり、正式な相続手続きとは別扱いです。
【3】名義変更・払戻しに必要な書類とは?
金融機関により多少異なりますが、おおよそ共通して必要な書類は以下の通りです。
✅ 必要書類一覧(基本パターン)
書類の種類 | 備考 |
---|---|
被相続人の戸籍(出生~死亡) | 相続関係を証明するための重要資料 |
相続人全員の戸籍謄本 | 相続関係・法定相続人の確認のため |
相続関係説明図(行政書士作成可) | 相続人の関係を図式化した書類 |
遺産分割協議書 | 相続人全員の署名・実印押印が必要 |
相続人全員の印鑑証明書 | 協議書に添付 |
被相続人の預金通帳やカード | 金融機関により原本確認が必要な場合あり |
金融機関指定の相続手続依頼書 | 各行で専用のフォーマットが用意されていることが多い |
🖊️ 遺言書がある場合は、遺言の検認済証明書または公正証書遺言の写し等が必要です。
【4】手続きの流れ
金融機関での相続手続きは、次のようなステップで進みます。
- 死亡届を提出し口座凍結(家族または銀行が把握)
- 必要書類の確認と準備
- 金融機関の窓口へ書類提出
- 書類審査(不備がなければ2〜3週間で完了)
- 払戻し or 名義変更手続き完了
⏱️ 金融機関によって審査期間が異なりますが、1か月以上かかる場合も珍しくありません。
【5】行政書士がサポートできること
行政書士は、金融機関提出用の以下の書類作成や収集支援が可能です:
- 戸籍収集(全国対応)
- 相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 金融機関提出書類の整理
- 必要な委任状の準備と記載例の提供
また、複数の金融機関にまたがる場合の統一的な管理・スケジューリングも対応可能です。
【まとめ】
- 相続によって預金口座は凍結される
- 正式な相続手続きには複数の書類が必要で、相続人全員の同意が基本
- 一部、遺産分割前に単独で払戻しができる制度(民法909条の2)もある
- 金融機関ごとにフォーマットや書式が異なるため注意
- 行政書士に依頼することで、効率的・確実に進めることができる