こんにちは、東京都中野区のかとう行政書士事務所です。
これまでの連載では「求人原稿の基本的な書き方」や「改善チェックリスト」をご紹介してきました。
しかし多くの中小企業からいただく相談の中で、特に多いのがこの一言です。
「同じような求人が多すぎて、自社の求人が埋もれてしまう」
確かに、ハローワークや求人媒体を見れば、似たような原稿が並びます。
仕事内容も条件も大差がなく、応募者からするとどの会社に応募すべきか判断がつきにくい状況です。
そこで今回は、同業他社と差をつけるための求人原稿の差別化戦略をテーマに、実践的な情報発信のコツをお伝えします。
■ なぜ求人原稿に「差別化」が必要なのか?
人材獲得競争が激化する今、応募者は「どの会社に応募するか」を慎重に比較検討しています。
条件面が似通っている場合、最終的に応募の決め手となるのは 情報の見せ方 です。
- A社:月給25万円、未経験OK、営業職募集
- B社:月給25万円、未経験OK、営業職募集
- C社:月給25万円、未経験OK、営業職募集(既存顧客フォローが中心。入社後3か月はOJT研修あり)
この場合、求職者がC社に興味を持つ可能性は高いでしょう。
同じ条件でも「何が特徴なのか」「働くイメージができるか」で差が生まれます。
■ 差別化を図るための情報発信のコツ
ここからは、実際に求人原稿で差別化するための具体的なポイントを解説します。
① 募集背景を具体的に伝える
「業績好調につき増員募集」と書くだけでは、他社との差は出ません。
例えば以下のように具体性を出すと、会社の姿勢や将来性が伝わります。
例
- 「新たに首都圏エリアでの取引先が拡大したため、営業チームを増員します」
- 「社内の若返りを図るため、20代~30代を中心に採用を強化しています」
② 仕事内容を「リアルに描写」する
同じ営業職でも、会社によって内容は異なります。
- 「既存顧客のルート営業が中心」
- 「法人向け新規開拓営業、テレアポなし」
- 「問い合わせ対応がメインで、飛び込みは一切なし」
このように書き分けるだけで、応募者は「自分に合っているか」を判断しやすくなります。
③ 社員の声やエピソードを盛り込む
求職者は、経営者や人事担当者の言葉だけでなく、実際に働く社員のリアルな声を重視します。
例
- 「入社2年目のAさん:未経験からスタートしましたが、先輩に同行しながら学べたので安心でした」
- 「子育て中の社員も多く、休暇調整がしやすいのが助かります」
こうしたエピソードは他社との差別化につながります。
④ 数字やデータで強みを伝える
抽象的な表現ではなく、具体的な数字を盛り込みましょう。
NG:「残業少なめ」
改善:「残業は月平均10時間以内」
NG:「若手が活躍中」
改善:「社員の約6割が20代・30代です」
データで示すと説得力が増し、信頼度も高まります。
⑤ 自社独自の制度・カルチャーを強調する
- 資格取得支援制度
- 社内イベント(例:年1回の表彰制度、社内勉強会)
- 働き方の柔軟性(例:リモート勤務、時差出勤)
応募者は「他社にはない魅力」に強く惹かれます。
⑥ 「言葉選び」で印象を変える
求人原稿は同じ条件でも「表現の仕方」で大きく印象が変わります。
例
- 「未経験歓迎」より「未経験から育成した実績多数」
- 「アットホームな職場」より「少人数で風通しのよいチーム制」
曖昧な言葉は避け、具体的に置き換えることが差別化のポイントです。
■ 差別化を実現した事例
ある中小企業の例をご紹介します。
同社は営業職の求人を出しても応募が集まらず、改善相談をいただきました。
改善前の原稿は「営業職募集/未経験OK/月給25万円~」と、ありふれた内容。
改善後は、以下の点を強調しました。
- 「既存顧客のルート営業(飛び込み・テレアポなし)」
- 「入社後3か月はOJT研修」
- 「社員の約7割が未経験入社」
- 「年間休日120日以上、残業月10時間」
結果として、応募数が2倍に増加し、内定者の早期離職も防ぐことができました。
■ まとめ
求人原稿は「ただ条件を並べるもの」ではありません。
- 募集背景
- 仕事内容の具体性
- 社員の声
- 数字や制度の強調
- 言葉選び
これらを工夫することで、同業他社と明確に差別化でき、応募者に「この会社で働きたい」と思わせる求人原稿に変わります。