相続人の中に未成年の子どもや認知症の高齢者がいる場合、
「遺産分割協議はどうしたらいいの?」と戸惑う方が多くいらっしゃいます。
このようなケースでは、本人が協議に参加することができないため、代わりに「代理人」を立てて手続きを行う必要があります。
今回は、相続人に判断能力がない方がいる場合の対応として、
- 特別代理人(未成年者の場合)
- 成年後見制度(認知症などの場合)
の仕組みと手続きについて解説します。
未成年者が相続人になるケースとは?
たとえば以下のような場面が該当します:
- 被相続人の子どもが未成年
- 配偶者が先に亡くなっており、相続人は未成年の孫だけ
- 離婚した元配偶者との間に未成年の子がいる
注意点
未成年者は法律行為を単独で行えないため、親権者が代理人となって協議に参加します。
ただし、親権者自身も相続人である場合は「利益相反」に該当します。
この場合、親は子の代理人にはなれません。
「利益相反」とは?
利益相反とは、代理人と本人の利益が対立してしまう状態をいいます。
たとえば、母と子が相続人であり、母が不動産を取得する内容の協議をするとき、
未成年の子の利益が損なわれる可能性があるため、母は代理人になれません。
家庭裁判所で「特別代理人」を選任
このような利益相反がある場合は、家庭裁判所に申立てを行い、第三者である「特別代理人」を選任してもらいます。
▶ 特別代理人選任申立の流れ:
- 申立人:通常は親権者が申立て
- 申立先:相続人(未成年)の住所地の家庭裁判所
- 必要書類:
- 申立書
- 被相続人の戸籍・相続関係説明図
- 財産目録
- 遺産分割協議案
- 特別代理人候補者の戸籍・住民票 など
- 選任される人物:信頼できる親族や、弁護士・司法書士などの専門職が候補になることもあります。
✅ 裁判所が「協議案の妥当性」も審査したうえで、選任を判断します。
認知症・知的障害・精神障害のある方が相続人の場合
このような方も、自ら意思表示ができないため、遺産分割協議には参加できません。
そのまま協議を進めると、協議が無効になる恐れがあります。
取るべき対応:成年後見制度の利用
- 成年後見人が本人の代わりに協議に参加します
- 家庭裁判所に申立てを行い、後見人を選任してもらいます
※成年後見制度の申立ては家庭裁判所に対する手続きであるため、
行政書士は申立書類の作成業務を行うことができません。
申立てをご検討の方は、家庭裁判所の窓口や弁護士等への相談をおすすめします。
成年後見制度の概要
類型 | 説明 | 対象となる方 |
---|---|---|
成年後見 | 全面的な支援 | 認知症が進行している方など |
保佐 | 一部支援 | 判断能力が著しく不十分な方 |
補助 | 軽度支援 | 判断能力が不十分なことがある方 |
成年後見制度を利用することで、被後見人の財産が不当に処分されることを防ぎつつ、
正当な遺産分割協議が行えるようになります。
行政書士ができる支援
行政書士は、以下のような相続手続きにおいてお役に立てます:
- 戸籍収集、相続関係説明図・財産目録の作成
- 遺産分割協議書の文案作成と文面調整
- 特別代理人選任申立に必要な添付書類の準備支援(書類収集など)
✍️ 成年後見の申立て書自体は作成できませんが、
相続関係や財産に関する書類作成・整理の面では行政書士がサポート可能です。
まとめ
- 相続人に未成年者・認知症の方がいる場合は、そのままでは遺産分割協議ができない
- 未成年者:利益相反があれば特別代理人の選任が必要
- 認知症等:成年後見制度の利用が必要
- 成年後見の申立ては弁護士等に依頼を(行政書士は作成不可)
- 行政書士は、相続関係の書類作成や、必要書類の収集などを通じて、スムーズな協議実現を支援可能