はじめに:どっちの遺言が正解なの?
遺言書を作成しようと思い立ったとき、まず悩むのがこの疑問です。
「自筆で書いてもいいの?それとも公正証書にするべき?」
「費用は?手間は?法的な安心度は?」
──遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、目的や状況によって最適な形式は変わってきます。
本記事では、両者の違いを表や事例を使ってわかりやすく解説し、
あなたにとってベストな選択ができるようサポートします。
【前提知識】遺言の種類は主に3つ、その中の2つが一般的
種類 | 特徴 | 利用頻度 |
---|---|---|
自筆証書遺言 | 自分で全文を書く | ◎多い(費用不要) |
公正証書遺言 | 公証役場で公証人に作成してもらう | ◎多い(信頼性高) |
秘密証書遺言 | 内容を秘密にしつつ証人を付ける | △非常に少ない |
※本記事では、日常的に選ばれる「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に絞って解説します。
【比較①】作成のしやすさ
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
作成方法 | 全文を本人が手書き | 公証人に口述、文書化してもらう |
費用 | 基本無料(用紙・ペンのみ) | 財産額に応じた費用が必要(数万円〜) |
必要な人 | 本人のみでOK | 証人2名、公証人が必要 |
📌自筆証書遺言は気軽に始めやすいが、公正証書遺言は専門家の関与で確実性が高まる。
【比較②】保管と安全性
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
保管場所 | 自宅など自己保管(または法務局) | 公証役場が原本を保管 |
紛失・改ざんリスク | 高い(誰にも見つからない可能性も) | ほぼゼロ |
開封時の手続き | 家庭裁判所の「検認」が必要 | 検認不要、すぐに使える |
📌「きちんと作ったのに見つからなかった」「改ざんされた」…
こうしたリスクを減らしたいなら、公正証書遺言が安心です。
【比較③】法的トラブルへの強さ
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
無効となる可能性 | 書き方ミスで無効になることも多い | 無効となる可能性は極めて低い |
トラブル回避度 | 中〜低 | 高い(専門家関与) |
裁判での信頼性 | 内容の信頼性に疑義が出やすい | 信頼性が極めて高い |
📌「本当に本人が書いたのか?」「認知能力はあったのか?」などの訴訟リスクを防ぐには、公正証書遺言が有効です。
【結論】こんな人にはこの遺言形式が向いています!
🔹自筆証書遺言がおすすめな方
- とりあえず遺言を早めに用意しておきたい
- 財産が少額で、分け方もシンプル
- 誰にも知られずに書いておきたい
- 自分で何でもやりたいタイプの方
✅補足:法務局による保管制度(2020年〜)を活用すると安全性がUP!
🔹公正証書遺言がおすすめな方
- 財産が多い、または不動産・株など内容が複雑
- 相続人が多く、トラブルの可能性がある
- 認知症リスクや病気が心配(意思能力の証明が必要)
- 書き間違いや形式ミスが不安
- 安心して確実に遺言を残したい
✅補足:証人は行政書士・司法書士などに依頼可能なので、ご家族が協力できなくても大丈夫です。
よくある質問(FAQ)
Q:公正証書遺言って費用が高いのでは?
A:財産額によって異なりますが、一般的には10万円前後。
→ 相続で数百万円・数千万円が動くことを考えれば、“争族回避の保険”として非常に安価です。
Q:自筆証書遺言の保管はどこがいい?
A:2020年から始まった法務局の遺言書保管制度を利用するのが◎
→ 家庭裁判所での検認が不要になり、保管料は1通3,900円。
まとめ:大切なのは「自分に合った形式を知る」こと
- 手軽さ重視 → 自筆証書遺言
- 確実性・安心重視 → 公正証書遺言
どちらが正しいというより、「どうして遺言を書きたいのか」という目的から逆算して選ぶのが賢明です。
✅ 書くことが目的ではなく、
✅ 「書いたあとにちゃんと残り、活きること」が本来の目的です。