遺言書だけでは防げない「資産凍結」の恐怖!家族信託(民事信託)との違いと賢い使い分け

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目次

「遺言書を書いたから安心」は大きな間違い?

「うちは遺言書も書いたし、相続対策はバッチリだ」

そう自信を持っている方にこそ、知っていただきたい「不都合な真実」があります。

確かに遺言書は、あなたが亡くなった後の「遺産分割」においては最強のツールです。

しかし、あなたが亡くなる前、例えば認知症になって判断能力を失ってしまった期間については、遺言書は何の役にも立ちません。

もし、あなたが認知症になり、口座が凍結されたら?

介護施設に入るために実家を売りたいのに、売買契約ができなくなったら?

誰があなたの財産を管理し、あなたのために使ってくれるのでしょうか?

近年、こうした「資産凍結リスク」への備えとして急速に普及しているのが、「家族信託(民事信託)」という仕組みです。

この記事では、行政書士が遺言書の限界、家族信託の画期的な仕組み、そして「遺言」と「家族信託」をどのように使い分ければよいのかを解説します。

これは、あなたと家族の「現在」と「未来」の両方を守るための、転ばぬ先の杖となる知識です。

まず、遺言書ができることと、できないことを明確に区別しましょう。

多くの人がこの「できないこと(限界)」を見落としています。

遺言書は「亡くなった瞬間」のための準備

遺言書の効力が発生するのは、民法で「遺言者の死亡の時」と定められています。

つまり、あなたが元気なうちはもちろん、病気で寝たきりになったり、認知症で判断能力がなくなったりしても、遺言書という紙切れは、金庫の中でただ眠っているだけです。

「私がボケたら、長男に財産管理を任せる」と遺言書に書いても、生前の財産管理には一切使えません

これが遺言書の最大の弱点です。

認知症になると「実家が売れない」

2025年には、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。

認知症により「意思能力がない」と判断されると、法律行為ができなくなります。

  • 不動産
    売買契約や賃貸契約が結べないため、空き家のまま放置するか、固定資産税を払い続けるしかなくなります。
  • 預貯金
    銀行は口座名義人の認知症を知ると、資産保護のために口座を凍結します。
    暗証番号を知っている家族であっても、窓口での大口出金や定期預金の解約はできなくなります。

介護費用が必要なのに、自分のお金が下ろせない。

実家を売って老人ホームの入居一時金に充てたいのに、売れない。

これが「資産凍結」の恐怖です。

成年後見制度「使い勝手の悪さ」とコスト

「認知症になったら成年後見人をつければいい」と思うかもしれません。

しかし、成年後見制度には厳しい制約があります。

  1. 柔軟な活用ができない
    後見人の役割は「財産の保護」なので、生前贈与や積極的な資産運用、孫への小遣いなどは原則認められません。
  2. 専門家報酬がかかり続ける
    親族が後見人になれず、弁護士や司法書士が選任された場合、月額2〜5万円程度の報酬を亡くなるまで払い続ける必要があります。
  3. 実家売却のハードル
    居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。

こうした「遺言書の空白期間」と「成年後見制度の窮屈さ」を埋めるために登場したのが、「家族信託」なのです。

家族信託とは、一言で言えば「元気なうちに、信頼できる家族に財産の管理権限を託しておく契約」のことです。

登場人物は3人!委託者・受託者・受益者

家族信託の仕組みは、以下の3人の役割を理解すれば簡単です。

  1. 委託者(いたくしゃ)
    財産を持っている人(例:親)。
    「財産を預ける人」。
  2. 受託者(じゅたくしゃ)
    財産を管理・運用・処分する権限を持つ人(例:信頼できる子)。
    「財産を預かる人」。
  3. 受益者(じゅえきしゃ)
    財産から生じる利益(家賃収入や生活費)を受け取る人(例:親)。
    「利益をもらう人」。

通常は、親が「委託者」兼「受益者」となり、子を「受託者」とします。

これにより、財産の名義(管理権限)は形式的に子に移りますが、実質的な利益は親が受け取り続けるという形になります。

家族信託でできること(遺言との違い)

家族信託契約を結んでおけば、親が認知症になっても、受託者である子の判断で財産を動かすことができます。

  • 不動産の売却
    実家の名義が受託者(子)になっているため、子のハンコで売却契約ができ、売却代金は親(受益者)のために使えます。
  • 預貯金の管理
    信託財産として管理されている金銭は、子が親のために自由に出金し、介護費用や医療費に充てることができます。
  • 柔軟な運用
    アパートの修繕や建て替え、組み換えなども、後見制度のような家庭裁判所の許可なしに、家族の判断で行えます。

遺言書を超えた機能:「受益者連続型信託」

遺言書では、「長男に相続させる」とは書けますが、「長男が死んだら、次は次男の子(孫)に相続させる」といった、次の次の承継先まで指定することはできません(これを「後継ぎ遺贈」といいますが、民法上無効とされるリスクが高いです)。

しかし、家族信託ならこれが可能です。

「自分が死んだら妻へ、妻が死んだら長男へ、長男が死んだら〇〇へ」と、数世代にわたる資産承継のルートを法的拘束力を持って指定できます。

これを「受益者連続型信託」と呼び、特に「先祖代々の土地を守りたい」「配偶者の連れ子には渡したくない」といったケースで威力を発揮します。

それぞれの制度には得意・不得意があります。

表で比較してみましょう。

3つの制度の比較一覧表

スクロールできます
項目遺言書家族信託成年後見(法定)
開始時期死亡時から契約時(生前)から判断能力低下後から
主な目的遺産分割の指定生前の財産管理 + 承継本人の保護・身上監護
認知症対策× できない◎ 最適△ 財産保護のみ可
財産管理の柔軟性◎ 柔軟(契約次第)× 厳格(現状維持)
初期費用安い(数万〜)高い(数十万〜)申立費用(数万〜)
維持費用なし原則なし専門家報酬(月額数万)

家族信託のデメリットも知っておこう

万能に見える家族信託ですが、デメリットもあります。

  1. 初期費用が高い
    複雑な契約書を作成し、信託登記を行うため、専門家報酬や登録免許税で数十万円〜の費用がかかります。
  2. 身上監護権がない
    成年後見人のように、本人の代わりに「施設入所契約」や「医療契約」を結ぶ権限はありません(財産管理に特化しているため)。
  3. 受託者の負担
    財産を預かる家族(受託者)には、帳簿作成義務や分別管理義務など、法的な責任が発生します。信頼できる家族がいなければ利用できません。

「うちは遺言書で十分?それとも家族信託が必要?」

迷っている方のために、典型的なパターン別のおすすめ対策を紹介します。

≪パターンA≫
【遺言書】だけで十分なケース

  • すぐに売却する予定の不動産がない
    自宅に住み続ける予定で、認知症になっても売る必要がない。
  • 預貯金が十分にある
    認知症になっても、年金や手元の現金で介護費用が賄える。
  • 財産管理がシンプル
    複雑な資産運用や、次の次の承継指定が必要ない。
  • 初期費用を抑えたい

このような方は、公正証書遺言を作成しておくだけでも十分な相続対策になります。

≪パターンB≫
【家族信託】を検討すべきケース

  • 「実家」が主な財産
    将来、施設に入る際に実家を売却して費用に充てたい(資産凍結リスク大)。
  • アパート経営をしている
    認知症になっても、賃貸借契約の更新や修繕、管理を継続する必要がある。
  • 配偶者が認知症気味
    自分が亡くなった後、認知症の配偶者が財産管理できるか不安。
  • 特定の希望がある
    障害のある子のために長期的に財産を管理してほしい、前妻の子には渡したくない等の強い想いがある。

最強の布陣「遺言+家族信託+任意後見」

完璧を目指すなら、併用(ハイブリッド対策)がおすすめです。

  • 家族信託で、主要な財産(不動産やまとまった現金)の生前管理と承継先を決める。
  • 遺言書で、信託しなかった財産(年金口座や予備の現金など)の承継先を決める。
  • 任意後見契約で、家族信託ではカバーできない「身上監護(施設契約や入院手続き)」を任せる。

これらを組み合わせることで、生前から死後まで、切れ目のない安心を手に入れることができます。

家族信託は、銀行や不動産会社も参入していますが、非常に法的に複雑な契約です。

ネットのひな形を適当に使って契約すると、銀行で口座が作れなかったり、税務署から贈与税を課税されたりする「失敗信託」になるリスクがあります。

家族信託は「契約書」が命

家族信託のキモは、「信託契約書」の設計です。

「いつ開始するのか」「受託者にどんな権限を与えるのか」「信託が終了したら財産はどうするのか」

これらを緻密に設計し、公正証書にする必要があります。

行政書士は、契約書の作成(起案)のプロフェッショナルとして、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの信託契約書を作成します。

専門家チームによるワンストップサポート

家族信託には、登記(司法書士)や税務(税理士)の知識も不可欠です。

当事務所では、家族信託に精通した司法書士や税理士と連携し、コンサルティングから契約書作成、信託口口座の開設サポート、そして信託登記までをワンストップで支援します。

「遺言書にするか、家族信託にするか」という入口の相談から対応可能ですので、無駄なコストをかけずに最適なプランを選択できます。

遺言書は「死後のラブレター」ですが、家族信託は「生前から家族と共に歩むパートナーシップ」です。

どちらが良い悪いではなく、あなたの資産状況や健康状態、そして「何を一番守りたいか」によって使い分けることが重要です。

  • 遺言書は死後の財産承継には有効ですが、生前の認知症による資産凍結は防げません。
  • 認知症になると、実家の売却や預金の解約ができなくなり、介護費用の捻出に苦労するリスクがあります。
  • 家族信託を利用すれば、親が元気なうちに財産管理権を子に移すことで、認知症になっても柔軟な資産活用(売却・運用)が可能になります。
  • 家族信託は初期費用がかかりますが、成年後見制度のような継続的なコスト(月額報酬)はかかりません。
  • 遺言書で十分なケースもあれば、家族信託が必須なケースもあります。まずは行政書士などの専門家に現状を診断してもらい、「遺言書」「家族信託」「任意後見」の中から最適な組み合わせを見つけることが、安心への近道です。

「まだ元気だから大丈夫」と思っている今こそが、対策のタイムリミットです。

認知症になってからでは、家族信託の契約も結べなくなります。

大切な資産と家族の生活を守るために、一歩進んだ相続対策を検討してみませんか?

ご相談は初回無料!お気軽にお問い合わせください。

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