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はじめに:「エンディングノートがあれば遺言は不要」だと思っていませんか?
最近では「終活」の一環としてエンディングノートを使う方が増えています。
しかし、よくあるのがこの誤解です:
「エンディングノートを書いたから、遺言書は書かなくていい」
実はそれ、大きな落とし穴かもしれません。
なぜなら、エンディングノートと遺言書では“法的効力”がまったく違うからです。
この記事では、「エンディングノートと遺言の違い」や、
両方を活用して自分の思いをしっかり伝える方法を解説します。
【違い①】法的効力の有無:エンディングノートには「法的な力」はない
- エンディングノート:
→ 法律上の書類ではなく、自分の気持ちや希望を残すメモのようなもの。
→ 書き方は自由で、自筆・パソコン・手帳でもOK。
→ ただし、財産の分配や相続に関する内容は法的な効力を持ちません。 - 遺言書:
→ 民法に基づく正式な法的文書。
→ 内容に従って財産分割・相続が実行されます。
→ 書き方や形式に厳格なルールがあり、正しく作成しないと無効になることも。
📌 結論:「遺言書がなければ、相続に関しては“希望止まり”になる可能性が高い」のです。
【違い②】伝えられる情報の“幅”
- エンディングノートは“気持ち”の伝達に適しています。
例:
- 医療や介護の希望(延命治療の可否、施設の希望など)
- 葬儀のスタイル(宗派、家族葬、戒名、遺影)
- デジタル遺産(SNSアカウント、パスワード)
- 親しい友人へのメッセージ
- 飼っているペットの今後について など - 遺言書は“財産と権利”を明確に指定します。
例:
- 不動産や預貯金の相続先
- 特定の人に財産を与える(遺贈)
- 遺言執行者の指定
- 相続人の廃除(重大な事情がある場合)
- 認知・後見人の指定(未成年子がいる場合)など
📌つまり、「想いを伝える」のがエンディングノート、「権利を動かす」のが遺言書。
【違い③】取り扱いの信頼性・証明性
- エンディングノートは個人保管が基本。
→ 発見されなければ意味がありません。内容が書き換えられることも。
→ 家族が見つけられるように、「どこにあるか」も共有しておきましょう。 - 遺言書は、公正証書で作成すれば公証役場が保管。
→ 相続発生後は「公証人」が内容を確認し、執行に進めるため信頼性が高いです。
【おすすめ】両方を“併用”することで、人生の最終章がスムーズに
エンディングノートと遺言は、どちらかではなく、両方あってこそ意味があるのです。
✅ 遺言書で「お金のこと」を法的にしっかり残す
→ トラブル回避、希望通りの相続配分が可能。
✅ エンディングノートで「気持ち・生活・思い出」を残す
→ 遺された人が“どうしたらいいか”を迷わずに済みます。
【併用の例】
項目 | エンディングノート | 遺言書 |
---|---|---|
銀行口座・暗証番号の一覧 | ○ | ×(原則記載不可) |
SNSのログイン情報・削除希望 | ○ | × |
財産の相続先・割合の指定 | × | ○ |
葬儀スタイル・お墓の希望 | ○ | ×(希望は可だが執行義務なし) |
財産の寄付・遺贈 | × | ○ |
飼い主のいないペットの世話依頼 | ○(気持ち) | ○(報酬付の指名も可能) |
【注意点】書いたら終わりではない、定期的な見直しがカギ
- 結婚、離婚、子の誕生、財産の増減、相続人の死去など
→ 状況が変わったら内容を見直すことが必要です。 - エンディングノートと遺言書の内容に矛盾があると混乱のもとになります。
→ 優先されるのは遺言書の内容ですが、感情面の行き違いも防ぎましょう。
まとめ:「エンディングノートだけ」でも「遺言書だけ」でも不十分
現代の終活は、“物”と“心”の両方を整えることが求められています。
✅ 遺言書 → 財産を法的に整える「責任」
✅ エンディングノート → 自分の人生を言葉で締めくくる「想い」
両方をバランスよく整えることで、
遺された人たちが迷わず、安心してあなたの人生を見送ることができます。