遺言書作成が必要な理由③:作成時のポイントと注意点
前回は、遺言書の種類とそれぞれの特徴について解説しました。
今回は、実際に遺言書を作成する際に気をつけるべきポイントや注意点をお伝えします。
遺言書が無効になったり、意図しない相続トラブルを招いたりしないように、しっかりと確認しておきましょう。
1. 遺言書は法的要件を満たしているか?
遺言書は、法律で定められた要件を満たしていないと無効になってしまいます。
特に自筆証書遺言の場合、形式のミスが原因で無効になるケースが多いため、以下のポイントに注意しましょう。
✅ 自筆証書遺言の基本ルール
- 遺言の全文を自分の手で書く(財産目録のみパソコン作成可)
- 日付を記入する(「〇月吉日」は無効)
- 署名と押印を忘れない
- 法務局での保管制度を利用すると、安全性が高まる
✅ 公正証書遺言の基本ルール
- 公証役場で公証人が作成し、法的に有効な内容にする
- 証人2名の立ち会いが必要
形式的なミスを防ぐためには、公正証書遺言の利用や専門家への相談が有効です。
2. 遺言書の内容は明確で分かりやすいか?
遺言書の内容があいまいだと、解釈をめぐって相続人の間で争いが生じる可能性があります。
以下の点を意識して、明確な記述を心がけましょう。
❌ 曖昧な表現の例
「長男に十分な財産を相続させる」
➡ 何をどれくらい相続させるのか不明確
✅ 明確な表現の例
長男〇〇(生年月日〇〇年〇〇月〇〇日)に、次の不動産を相続させる。
土地
所在 東京都○○区〇〇町□丁目
地番 □番
地目 宅地
地積 △△△.△△平方メートル
財産の特定が難しい場合は、不動産登記簿や銀行口座番号などを記載するとより明確になります。
3. 遺留分(いりゅうぶん)を考慮しているか?
遺言書の内容によっては、相続人の「遺留分」を侵害する可能性があります。
🟠 遺留分とは?
一定の相続人(配偶者、子、直系尊属)には、法律上保証された最低限の相続割合(遺留分)があり、遺言書でその権利を奪うことはできません。
✅ 例:遺留分を侵害するケース
全財産を親族以外の第三者に譲りたい場合など
➡ 配偶者や子どもの遺留分を無視すると、相続トラブルにつながる可能性が高い
遺言書の作成前に、遺留分の割合を把握し、相続人間で大きな問題が生じないように配慮することが大切です。
4. 遺言執行者を指定しているか?
遺言を確実に実行するためには、「遺言執行者」を指定しておくことをおすすめします。
🟠 遺言執行者とは?
遺言の内容を実際に執行する役割を持つ人です。
相続人の他、専門家を指定することもあります。
✅ 遺言執行者を指定するメリット
- 相続手続きがスムーズに進む
- 遺言の内容が適切に実行される
- 相続人間の争いを防ぐことができる
特に、財産が複雑な場合や、相続人以外に遺産を渡す場合(例えば、孫や知人への遺贈)には、遺言執行者の指定が有効です。
5. 定期的に遺言書を見直しているか?
人生の状況は変化します。
遺言書を作成した後も、定期的に内容を見直し、必要に応じて修正することが大切です。
✅ 遺言書を見直すべきタイミング
- 家族構成の変化(結婚、離婚、子どもの誕生など)
- 財産状況の変化(不動産の売買、財産の増減など)
- 法改正があった場合
遺言書の変更や取り消しは可能ですが、新しい遺言書を作成した際には古い遺言を撤回する旨を念のため明記することを忘れないようにしましょう。
まとめ
遺言書を作成する際は、以下のポイントに注意しましょう。
1️⃣ 法的要件を満たすこと(特に自筆証書遺言の場合)
2️⃣ 内容を明確に記載すること(財産の特定と分配割合を明確に)
3️⃣ 遺留分を考慮すること(相続トラブルを防ぐ)
4️⃣ 遺言執行者を指定すること(確実な遺言執行のため)
5️⃣ 定期的に見直すこと(家族や財産状況の変化に対応)
せっかく作成した遺言書が無効になったり、意図しない形で相続が行われたりしないように、慎重に作成することが重要です。
次回は、「遺言書が特に必要なケース」について詳しく解説します!