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「良かれと思って」が招く、皮肉な親族の断絶
「うちは家族仲が良いから、簡単な遺言書さえあれば大丈夫」 「財産なんて大したことないから、揉めるはずがない」 私たち行政書士が相続の相談を受ける際、最も多く耳にする言葉ですが、実はこれこそが最も危険な予兆です。
2024年4月に施行された相続登記の義務化により、相続手続きの遅延は過料(罰則)の対象となりました。
さらに2025年、超高齢社会のピークを迎える中で、認知症による遺言能力の疑いや、ネット銀行・暗号資産といったデジタル遺産の放置が原因で、「争族」の泥沼化が加速しています。
遺言書は、書き方ひとつで「家族を守る盾」にもなれば、「家族を切り裂く刃」にもなり得ます。
今回は、行政書士が実務の現場でよく耳にする失敗事例を紐解き、法的トラブルを回避するための最新の解決策を解説します。
≪事例:紛失と隠匿≫
「見つからない遺言書」が招く不信感
遺言書は、死後に発見され、内容が執行されて初めて意味を持ちます。
しかし、保管場所を工夫しすぎたために、親族間で深刻な不信感が生まれるケースが後を絶ちません。
自宅保管という不確実な選択
行政書士の相談窓口でよく聞かれるのが、「父が遺言書を書いたと言っていたが、どこにも見当たらない」という相談です。
自筆証書遺言を仏壇の引き出しや貸金庫、あるいは本棚の奥に隠すように保管している方は多いですが、これには二つの大きなリスクがあります。
一つは、「発見されない」リスクです。
本人が良かれと思って隠した場所が、死後誰にも気づかれず、結局遺産分割協議が終わった後に見つかり、すべてがひっくり返るという混乱です。
もう一つは、「隠匿・改ざん」のリスクです。
遺言書を最初に見つけた相続人が、自分に不利な内容であると判断して破棄したり、書き換えたりする誘惑に駆られるケースです。
これが原因で兄弟間に「お前が隠したのではないか」という一生消えない疑念が生まれます。
≪解決策≫
2025年推奨の「公的保管」
現在の実務において、自筆証書遺言を自宅で保管することは推奨されません。
- 法務局の遺言書保管制度
国が遺言書を預かるため、紛失や隠匿のリスクがゼロになります。
また、検認手続きが不要になるため、死後の事務負担も大幅に軽減されます。 - 公正証書遺言
公証役場に原本が保管され、全国どこの公証役場からでも検索が可能です。
「見つからない」「隠される」という物理的なリスクを排除することが、争族回避の第一歩です。

≪事例:遺留分の侵害≫
「全財産を一人に」が招く現金支払いの地獄
「家業を継ぐ長男にすべての不動産を継がせたい」という親心。
一見、筋が通っているように見えますが、これが他の相続人の遺留分(いりゅうぶん)を侵害している場合、深刻な事態を招きます。
2019年改正法による「金銭解決」の重圧
かつての制度では、遺留分を侵害しても「土地の一部を分ける」ことで解決できましたが、2019年の民法改正以降は「現金を支払う(遺留分侵害額請求)」ことがルールとなりました。
行政書士がよく耳にするのは、長男が数億円の価値がある土地を相続したものの、手元の現金がほとんどないというケースです。
そこへ他の兄弟から「法律通りの現金を今すぐ支払え」と請求が届きます。
支払い能力がない長男は、先祖代々の土地を売却して現金を作るしかなく、結果として「家を守るための遺言が、家を失う原因になる」という本末転倒な結果を招いています。
≪解決策≫
遺言作成時の「支払原資」の確保
専門家が関与する場合、必ず遺留分を計算した上で文案を作成します。
- 遺留分を侵害しない配分
最初から不満が出ない程度の現金を他の相続人に割り当てる。 - 生命保険の活用
長男を受取人とする生命保険に加入し、その保険金を遺留分の支払原資(代償金)として準備する。
このように、法的な権利(遺留分)をあらかじめ織り込んだ設計にすることが、家族の絆を守る鍵となります。

≪事例:認知症と能力≫
「遺言能力」の疑いが招く無効主張
高齢化が進む現在、遺言書を作成した時点での本人の判断能力(遺言能力)が争点となるケースが激増しています。
「書かされた」という主張の泥沼化
長女が献身的に介護をしていた親が、「長女に多くを譲る」という遺言を残して亡くなったとします。
その後、疎遠だった次男が「あの時、親父はすでに認知症だった。
長女が無理やり書かせたものだ」と主張し、遺言の無効を訴える裁判を起こす……。
これは行政書士の現場では非常にポピュラーなトラブルです。
一度裁判になれば、過去のカルテや介護記録、日記、メールなどが精査され、家族のプライバシーが白日の下にさらされます。
そして、結論が出るまで数年の歳月を費やし、兄弟の関係は完全に修復不可能となります。
≪解決策≫
客観的な「証拠」の積み上げ
認知症への懸念がある場合、以下の対策が必須です。
- 専門医による診断書
作成当日に「判断能力に問題なし」とする診断書を取得します。 - 公正証書遺言の選択
法律の専門家である公証人が、本人と直接対話して意思確認を行うため、自筆証書遺言に比べて無効主張を退ける力が圧倒的に強くなります。 - 作成過程の動画保存
公証人の面談風景を記録しておくことも、現代の実務では有効な手段とされています。

≪事例:デジタル資産≫
見えない財産が招く「発見不能リスク」
2025年現在、ネット銀行やネット証券、暗号資産(仮想通貨)を保有している高齢者が増えていますが、これらが遺言書に反映されていないことで生じるトラブルが急増しています。
遺族が「口座の存在すら知らない」恐怖
実務上よく聞かれるのが、亡くなった方のスマートフォンにロックがかかっており、どの銀行にいくら預けているのか全く分からないという事例です。
通帳も郵便物もないため、家族が気づかないまま放置され、数年後に判明しても手続きが極めて煩雑になる、あるいは資産が消失してしまうという事態が起きています。
また、月額課金のサブスクリプションサービスが解約できず、亡くなった後も延々とクレジットカードから料金が引き落とされ続けるといった細かなトラブルも頻発しています。
≪解決策≫
財産目録への「デジタル資産」の完全網羅
最新の遺言実務では、以下の対応が不可欠です。
- ネット口座の特定
銀行名、支店名、ログインIDの控え(パスワードは別途管理)を財産目録に明記する。 - スマホのロック解除に関する指示
信頼できる相続人にのみ、パスワードの所在を伝える仕組みを整える。 - デジタル遺品整理の指定
SNSの閉鎖やサブスクの解約を誰が行うかを明記する。

≪事例:形式不備≫
相続登記義務化が突きつける「正確性」
2024年4月に始まった相続登記の義務化は、2025年において遺言書の「質」を厳しく問うものとなっています。
「住所」で書いた遺言書が受理されない?
よくある失敗として、不動産の表記を「自宅(〇〇市〇丁目〇番)」と、普段使っている住所で書いてしまうケースがあります。
しかし、不動産登記には「地番(ちばん)」という別の番号が必要です。
住所と地番が異なる場合、法務局で名義変更を拒否されることがあります。
こうなると、遺言書があるにもかかわらず、結局相続人全員の判子(遺産分割協議書)が必要になり、仲の悪い兄弟がいれば手続きはそこでストップします。
3年以内に登記を完了させなければならない義務がある中で、このような形式不備は致命的です。
≪解決策≫
登記事項証明書に基づいた記述
行政書士は、必ず法務局から最新の登記事項証明書(登記簿)を取り寄せ、コンマ一字の違いもなく書き写します。
- 地番・家屋番号の正確な記載
登記官が一切の疑義を持たずに受理できる書面を作成します。 - 未登記建物の処理
実家の一部が増築されて未登記のままになっている場合など、死後のトラブルになりやすい点も事前に解消しておきます。

≪事例:後継ぎ遺言≫
数代先まで指定したいという「無効な希望」
「長男に継がせ、長男が死んだらその孫に継がせてほしい」という願い。
実は、普通の遺言書では数代先までの指定は法的に不可能です。
遺言書の効力は一世代限り
遺言書で指定できるのは、あくまで「自分が死んだときに誰に渡すか」までです。
渡った後の財産をその人がどうするかまで縛ることは、所有権の原則に反するため、法律上無効となります。
行政書士の相談でも、「先祖代々の土地が、息子の嫁の実家へ流出するのを防ぎたい」という相談をよく受けますが、遺言書だけではこの希望を叶えることはできません。
≪解決策≫
家族信託(民事信託)の併用
このような複雑な希望を持つ場合には、遺言書ではなく(あるいは遺言書と併用して)家族信託を活用します。
信託を使えば、「一次受益者は妻、二次受益者は長男、三次受益者は孫」といった形で、数代先までの承継ルートを法的に固定することが可能になります。
2025年現在、資産家や地主の方々にとって、このスキームは必須の選択肢となっています。

よくある質問(FAQ)
トラブルは「無知」と「油断」
から生まれる
行政書士としていえることは、遺言トラブルのほとんどは「事前の準備」で回避できるということです。
- 自宅保管の遺言書は、紛失・隠匿・改ざんのリスクが高く、現代の相続対策としては不十分である。
- 遺留分を無視した「極端な配分」は、死後に現金支払いの負担を相続人に強いることになる。
- 認知症による遺言無効主張を防ぐには、公正証書遺言と医師の診断書による「証拠」の確保が不可欠。
- デジタル資産の放置は、現代特有の「資産喪失」トラブルを招くため、財産目録の更新が急務。
- 相続登記義務化に対応するため、不動産表記は住所ではなく「地番・家屋番号」で正確に記載する。
- 家族信託など最新の法的スキームを組み合わせることで、遺言書単体では不可能な高度な承継も実現できる。
相続は、お金の問題であると同時に、感情の問題でもあります。
あなたが一生懸命に築き上げてきた財産が、家族の絆を壊す原因になってしまうことほど、悲しいことはありません。
2025年という大きな変革の時代において、最新の法令に則り、かつ家族の心情に配慮した遺言書を作成することは、あなたが家族へ残せる「最後にして最大の愛情」です。
「うちの場合はどうなるだろう?」「今ある遺言書で大丈夫だろうか?」という少しの疑問が、大きなトラブルを防ぐきっかけになります。
その不安を安心に変えるために、私たちは法的な知識と、多くの事例から得た知恵を惜しみなく提供します。
あなたの想いが、大切な方々の未来を明るく照らす光となるよう、私たちはその設計図を丁寧に、そして強固に描き続けます。
